文献詳細
特集 認知症の人の認知機能障害,生活障害,行動・心理症状の構造
認知症の人の認知機能障害,生活障害,BPSD(行動・心理症状)の心理社会的構造
著者: 高橋幸男1
所属機関: 1エスポアール出雲クリニック
ページ範囲:P.897 - P.903
文献概要
2015年1月に策定された認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の基本的な考え方として「認知症の人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現をめざす」とされている。いうまでもなく“認知症の人”が主人公である。認知症の人にやさしい地域,すなわち認知症の人に寄り添いながら認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができる社会づくりが推進されているのであり,そのための医療や介護の仕組みが必要だと言っているのである。しかし,認知症に関する情報は,本人主体の医療や介護が大切だと言いながら,認知症という“疾患”に関する脳科学的な情報がその大半を占めていて,認知症の人の想いや生活のあり様についての情報は限られている。最近になって,若年性認知症の当事者の人たちが語り始めたけれども,まだ十分知られていないことが多い。今まさに認知症の人の想い(意思)が尊重された医療や介護が問われているのである。
筆者らは,1993(平成5)年に激しいBPSD(行動・心理症状)のある認知症の人を対象にした重度認知症患者デイケア(以下,デイケア)を開設した。以来23年有余にわたって,集団精神療法的なかかわりを行い,認知症の人の思いや生活を受け止める医療や介護を行ってきたが5,6),認知症の人たちから多くのことを教えられた。
本稿では,認知症の人たちはどういう想いで日々暮らしているのか,認知症の人と周囲の人との関係性はどうなっているのかなど認知症の人の想いや生活のあり様を見つめる中で,認知機能障害や生活障害,そしてBPSDに至る心理社会的構造を論じることにしたい。
参考文献
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