icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学58巻11号

2016年11月発行

書評

—倉知正佳 著—“脳と心”からみた統合失調症の理解 フリーアクセス

著者: 篠崎和弘1

所属機関: 1和歌山県立医科大学・神経精神医学

ページ範囲:P.965 - P.965

文献概要

 優れた総説を探し当てて読むことを若い後輩には薦めています。折々には単行本の精読も薦めますが,英文だと反応が鈍いものです。著者自ら統合失調症の「古典的精神医学と現代の精神医学の橋渡し的役割をはたしているかもしれない」(p.279)とあとがきに記された本書は,精読を強くお薦めする単行本です。また幸いに日本語です。母国語でこの高いレベルの本が読めるのはこの国に生まれた僥倖と言えるでしょう。若い医師たちや,研究をめざす医師はもちろん,臨床で活躍している医師にも,読んでいただきたい本です。
 臨床家の中には,研究段階の生物学的知見が臨床に必要か,と疑問を持たれる方もおられるでしょう。それに対する答えはこうです。臨床家は「統合失調症は患者や家族の人生に深い影響を及ぼす。予後良好な疾患にするためには何をすればよいのだろうか」(p.ⅲ)と工夫を凝らしていることでしょう。また統合失調症の全体像が未解明であること,薬物治療が満足できるレベルに達してないことにも歯がゆい思いをされると思います。それゆえ,不完全な知識と技術で臨床をしている,という危うさを熟知しておくことは,専門家としての責任であり,また治療の選択肢を増やしてくれるはずです。この本が「理解」と題されているのはそのような意味もあってではないでしょうか。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら