文献詳細
書評
文献概要
本書は畏友松本雅彦先生の遺著である。著者と評者は同年生まれ,精神病理学と精神科医療の歴史という面ではほぼ同時代を生きてきた。一時期「臨床精神病理」誌の編集に一緒に携わったが,松本先生の学風は衒がなく中庸,かつ誠実であった。成書の読み込みも深く,さすが京都学派といつも感じていた人である。
本書は全七章から成っている。第一章から第五章までは,精神科医としての自己形成が自伝的に描かれている。インターン制度への問題意識,精神医学を選ぶに至った動機など誠実な語り口で述べられている。自らを「斜に構える」生き方への嗜好があるという性格は,案外精神病理学者に通底する傾向ではないか,と評者も同感する。入局後の無給医の暮らしと大学での研修というか,丁稚奉公のありさまは名門の京都大学も,信大のような田舎の大学も全く同じであった。
本書は全七章から成っている。第一章から第五章までは,精神科医としての自己形成が自伝的に描かれている。インターン制度への問題意識,精神医学を選ぶに至った動機など誠実な語り口で述べられている。自らを「斜に構える」生き方への嗜好があるという性格は,案外精神病理学者に通底する傾向ではないか,と評者も同感する。入局後の無給医の暮らしと大学での研修というか,丁稚奉公のありさまは名門の京都大学も,信大のような田舎の大学も全く同じであった。
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