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特集 成人の自閉スペクトラム症とライフステージの課題
自閉スペクトラム症の青年期—大学における男性例の支援を中心に
著者: 本田秀夫1 小田佳代子1 篠田直子2
所属機関: 1信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部 2信州大学学生相談センター障害学生支援室
ページ範囲:P.383 - P.390
文献購入ページに移動自閉スペクトラム症(以下,ASD)の人たちは,思春期から青年期にかけて多彩な生活上の困難を示す。学童期までは周囲と自分との関係に気付かず,傍若無人な態度をとっていることが多い。しかし,思春期・青年期に入ると,周囲と自分との関係に気付きはじめる。性格的には真面目さが急激に前面に出てくる。
青年期のASDの人たちは,ASDの特性の有無だけでなく,育った環境によってもパーソナリティ形成が大きく影響を受ける5)。学童期までに診断され,本人の特性に応じた支援が適切になされていれば,この時期に自分の特性をある程度自覚し,得意なところに自信を持ちつつ苦手なことへの対処を学ぶ意欲を持つことが可能である(特性特異的教育タイプ)。ところが,本人の発達特性について周囲が気付かないままにいると,場当たり的な対応をされることが多いため,不安と他者への猜疑心が高まり,他罰的,攻撃的になり,うつ,不安,強迫,被害念慮,攻撃性など,さまざまな精神症状を併発することがある(放任タイプ)。逆に,本人の発達特性に対して周囲が訓練などで克服させようとするあまり負担の大きい課題を強要し続けると,思春期・青年期に周囲と自分との違いに気付いたときに急激に自己評価が下がる。それに伴い,うつや不安症状を呈する(過剰訓練タイプ)。学校の成績のよい場合などは,勉強さえしていれば将来何とかなるのではないかと本人も周囲も錯覚し,社会に出ていくときに最低限必要なスキルを学びそこねたままで学歴だけが高くなり,かえって卒後の適応が難しくなることがある(自主性過尊重タイプ)。
特性特異的教育タイプの育ち方をしている人であっても,ASDの特性は残存するため,青年期の社会生活のさまざまな場面で何らかの配慮を要することがある。放任タイプや過剰訓練タイプの育ち方をした人たちは,青年期までに何らかの二次障害を併存することが多いため,ASDの特性に対する配慮に加えて精神医学的な治療や支援を要する。自主性過尊重タイプの育ち方をした人たちは,二次障害はまだ出現していなくとも,大学入学後は親の保護から離れ,自律的な判断を多く求められるようになるため,この段階でASD特性による生活困難が一気に露呈する。
本稿では,青年期におけるASDの人たちへの支援の実際を,特に男性例を中心に,大学における発達障害学生支援を例にとりながら紹介する。
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