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特集 成人の自閉スペクトラム症とライフステージの課題
初老期の自閉スペクトラム症者
著者: 村上伸治1 高橋優1 和迩健太1 北村直也1 澤原光彦1 青木省三1
所属機関: 1川崎医科大学精神科学教室
ページ範囲:P.407 - P.414
文献購入ページに移動成人の自閉スペクトラム症(ASD)を考える際には,対象を2つに分けて考えるのが良い。1つは,児童期からASDであることに気付かれ,障害児として育ち成人している例であり,その大半は主治医などの支援者を児童期から持っている。もう1つは,ASDであることに気付かれないまま児童期を過ぎ去り,青年期以降に何らかの症状を呈して精神科を受診するなどして,初めてASDの存在に気付かれたり,疑われるようになった例である。
昔から発達障害に対応していた児童精神科臨床の場ではなく,一般精神科臨床において,近年,発達障害の問題が言われるようになったのは,上記の前者ではなく,後者の存在が注目されるようになったためである1)。
児童期から診断を受けて,現在初老期になっている例は,半世紀近く前の時代に診断されているのであるから,当時はASDの概念はあるはずもなく,診断としては古典的な自閉症の人であろう。そこで本稿では,青年期以降にASDが疑われるようになる例を主な対象として,初老期のASD者の問題を考えてみたい。なお,本稿記載の症例については,かなりの改変などを行っており,多数の事例を元にした一般的事例ないし架空の事例とみなされるものである。
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