icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学58巻5号

2016年05月発行

文献概要

短報

大うつ病性障害を併存した身体症状症にduloxetineが著効した1例

著者: 岸野恵1 向井馨一郎1 清野仁美1 松永寿人1

所属機関: 1兵庫医科大学精神科神経科学講座

ページ範囲:P.443 - P.446

文献購入ページに移動
抄録
 8年間にわたりめまい,ふらつき,動悸,四肢のしびれ,頭重感,全身倦怠感,胃部不快感,手の震えなどの多彩な身体症状を呈した63歳女性の身体症状症の治療経過を報告した。症状悪化に関する不安を持続的に抱き,症状改善を求めて多数の医療機関を受診しDSM-5の身体症状症の診断基準を満たしていた。また,患者は抑うつ気分を呈していたが,一般にうつ病性障害の身体症状は気分エピソードが存在する期間に限られるが,本症例は身体症状が抑うつ気分に先行していたため,身体症状から2次的に大うつ病性障害を合併したと考えた。Duloxetineの投与,疾病教育を行うことで身体症状の改善を認めた。薬物療法が確立していない身体症状症にduloxetineの有用性が示唆された。

参考文献

1) 本間正教,加藤秀明:併存疾患を伴わない身体化障害にduloxetineが奏効した1例.精神医学55:1085-1092, 2013
2) 菊池安希子:ストレス関連障害,解離性障害,身体表現性障害の認知行動療法③—身体表現性障害.神経症性障害の治療ガイドライン.精神科治療学26(増刊号):180-184, 2011
3) Kleinstäuber M, Witthöft M, Steffanowski A, et al:Pharmacological interventions for somatoform disorders in adults. Cochrane Database Syst Rev 11:CD010628. doi:10. 1002/01651858. CD010628. pub 2, 2014
4) 須田史郎,加藤敏:身体化障害.神経症性障害の治療ガイドライン.精神科治療学26(増刊号):146-149, 2011
5) 髙橋三郎,大野裕:身体症状症および関連症群.DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院,pp155-160, 2014
6) 融道男,中根允文,小見山実,他監訳:気分障害.ICD-10—精神および行動の障害,臨床記述と診断ガイドライン.新訂版.pp119-141,医学書院,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?