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文献詳細

雑誌文献

精神医学58巻6号

2016年06月発行

文献概要

巻頭言

〈できること〉の見つけ方

著者: 福田正人1

所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学

ページ範囲:P.458 - P.459

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 「メンタルヘルス・サービスの質」,「移民のメンタルヘルスケア」,「メンタルヘルス・サービスにおける信頼の確立」,「精神科医の役割と責任」,「精神医療と精神科医のイメージの向上」。これらはいずれも,ヨーロッパ精神医学会(European Psychiatric Association;EPA)が2012年からその機関誌であるEuropean Psychiatryに掲載を始めた,ガイダンスシリーズ(EPA Guidance Series)のタイトルである。EPAは,37か国の40学会が構成するヨーロッパの組織である。
 エビデンスとそのメタ解析にもとづくガイドラインが広がってきたが,エビデンスは十分でないが臨床的には重要なテーマ,ガイドラインはあるが実践されずに本棚にしまいこまれている現状,そもそもエビデンスという考え方が馴染まない分野は数多い。そうした現在のガイドラインが及ばないテーマについて指針を示そうとするのが,このガイダンスシリーズである。その背景には,「最善の臨床実践はエビデンスと経験の両者にもとづく」という臨床の知恵があり,それを支えるのは「精神疾患を持つ患者への精神科サービスの質を向上する(improve the quality of psychiatric services for patients with mental disorders)」という簡潔な言葉でその使命を表現するEPAの覚悟である。ガイダンスは,行動の指針を示すとともに,これから取り組むべき研究テーマを明確にすることを意図しているという。

参考文献

1) 青木省三:精神科治療の進め方.日本評論社,2014
2) Bhugrs D, Ventriglio A, Kuzman MR, et al:EPA guidance on the role and responsibilities of psychiatrists. Eur Psychiatry 30:417-422, 2015
3) Bhugrs D, Sartorius N, Fiorillo A, et al:EPA guidance on how to improve the image of psychiatry and of the psychiatrist. Eur Psychiatry 30:423-430, 2015
4) 福田正人:「専門家」がようやく学んだこと.精神療法39:625-628,2013
5) Gaebel W, Muijen M, Baumann AE, et al:EPA guidance on building trust in mental health services. Eur Psychiatry 29:83-100, 2014
6) Gaebel W, Zielasek J:Schizophrenia in 2020:Trends in diagnosis and therapy. Psychiatry Clin Neurosci 69:661-673, 2015
7) グラハム・ソーニクロフト,ミケーレ・タンセラ著,岡崎祐士,笠井清登,福田正人,他監訳:精神保健サービス実践ガイド.日本評論社,p210, 2012
8) 石田由香理,西村幹子:〈できること〉の見つけ方—全盲女子大生が手に入れた大切なもの.岩波書店,2014
9) 永井良三総監修,笠井清登,三村將,村井俊哉,他編:精神科研修ノート 改訂第2版.診断と治療社,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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