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文献詳細

雑誌文献

精神医学58巻7号

2016年07月発行

文献概要

短報

過量服薬後に脳梗塞を発症した症例について

著者: 植木ひとみ1 高橋有記1 川口要1 小田暁1 前原瑞樹1 大西雄一1 三上克央1 長田貴洋2 山本賢司1

所属機関: 1東海大学医学部専門診療学系精神科学 2東海大学医学部外科学系脳神経外科学

ページ範囲:P.645 - P.649

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抄録
 救命救急センターで入院に至る全患者のおよそ10%前後を自殺企図および自傷行為による患者が占めており,その手段としては半数程度が過量服薬である。過量服薬で救命救急センターに救急搬送されるケースはよく経験するが,過量服薬後に脳梗塞を発症したという報告は実に少ない。今回,若年でありながら過量服薬後に脳梗塞を発症した症例を経験したので報告する。過量服薬後は,意識障害や嘔吐などによる脱水,薬剤による血栓傾向,長期臥床による血栓形成などさまざまな脳梗塞のリスクがあるため,悪性症候群や昏迷などが疑われる症状を認めた際にも,鑑別診断として脳梗塞を念頭に置き,頭部画像の評価を検討することが必要である。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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