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雑誌詳細

文献概要

特集 精神科臨床にみる家庭・家族の現在—何が変わり何が変わらないのか?

ある変化—治療者自身と家族への視点

著者: 池田暁史1

所属機関: 1文教大学人間科学部臨床心理学科

ページ範囲:P.753 - P.758

はじめに
 精神科臨床で出会う家族,あるいは精神科臨床から垣間見える家庭が現在どうなっているのか。以前と較べて何か違いがあるのか。あるとしたらそれは何で,何故そのような違いが生じているのか。本特集で与えられたこうした問いについて考察を進める前に,私は自身に期待されているであろう役割を明確にしておきたい。端的にいえば,それは私の限界を示すことでもある。
 恐らく一番重要なことは,私が家族の専門家ではないということである。特定の家族療法の訓練を受けたことはないし,社会学的あるいは文化論的に家族にアプローチするような経験も積んでいない。したがって何らかの体系立った方法で家族について論じることはできそうにない。もっとも,それは私が家族を診ない臨床家であることを意味するものではない。むしろ私自身は,通常の保険診療において十分熱心に家族と関わる臨床家であると思っている。ただしそれは,私が学んできた精神分析に基づく家族力動の理解を中心に,多少のシステム論的知識や集団療法の経験などを組み合わせたものによるアプローチに過ぎない。したがって,これから論じることは,良くも悪くもパーソナルな色彩の強い「私の家族論」であることをお断りしておきたい。

参考文献

1) Bion WR:Experiences in Groups and Other Papers. Basic books, New York, 1961(池田数好訳:集団精神療法の基礎.岩崎学術出版社,1973)
2) Ferreira A:Family myth and homeostasis. Arch Gen Psychiatry 9:457-463, 1963
3) 藤縄昭:面接—患者心理,医師-患者関係を含む.臨床精神医学講座16 精神医学的診断法と検査法.中山書店,1999
4) 藤山直樹:集中講義・精神分析(上).岩崎学術出版社,pp82-85, 2008
5) 狩野力八郎:システム家族論からみた家族と精神分析からみた家族.思春期青年期精神医学 5:175-182, 1995
6) Winnicott DW:Hate in the countertransference (1947). In:Collected Papers:Through Pediatrics to Psayho-Analysis. Tavistoc, London, 1958(中村留貴子訳:逆転移の中の憎しみ.北山修監訳:小児医学から精神分析へ—ウィニコット臨床論文集.岩崎学術出版社,2005)

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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