文献詳細
特集 精神科臨床にみる家庭・家族の現在—何が変わり何が変わらないのか?
「隔」家族化を恐れる家族—発達障害のある子どもの子育ての支えを通して
著者: 岡田俊1
所属機関: 1名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科
ページ範囲:P.771 - P.775
文献概要
わが国では,単独世帯が大半を占めること,それに伴う家事労働や育児の分担が困難であることなど,核家族化の弊害が指摘されてきた。その背景には,就労先が都市部に偏り,都市部における住宅事情が厳しいなど,社会情勢が大きく関与しているが,同時に,プライバシーの確保や,実家からの干渉を避け,家族としての意思決定を保とうとするなど,核家族化を志向するインセンティブが働いたことも事実である。しかし,近年では家族は,その「核」としての機能を失いつつあり,家族としての意思決定や問題解決において機能不全に陥っている。
筆者は,発達障害を中心として,児童・青年を対象とする精神科臨床を行っているが,そこで発達障害のある児童・青年を対象とするのと同等に,これらの子どもたちを抱える家族の力動を扱うことが求められる。しかし,近年では,家族の力動自体がエネルギーを失っており,家族としての集約性が見出せない家庭が少なくないと感じられる。家族は,家族をなしえず,ただ家族という名の下にそこに接点を持つだけであり,大きな波風もないのである。しかし,一人一人は安寧に過ごしているわけではない。常に不安を感じ,誰からも隔絶することに怯えながら生きている。このような「隔」家族のなかで,援助が必要な子どもの子育てはいかに受容されていくのか,そういった家族はいかなる支えを求めているのかについて述べることとしたい。
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