文献詳細
文献概要
特集 精神科臨床にみる家庭・家族の現在—何が変わり何が変わらないのか?
挙児希望と生まれてくる子どもの福祉
著者: 上別府圭子1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻家族看護学分野
ページ範囲:P.785 - P.796
文献購入ページに移動はじめに
2016年5月11日,フランス通信社(AFP通信)から次のようなニュースが報じられた。
“先月,70歳で第1子を出産したインド人女性が10日,AFPの取材に応じ,母親になるのに老い過ぎていることはなく,出産によってようやく人生を全うできたと語った。
ダルジンダー・コー(Daljinder Kaur)さんは,北部ハリヤナ(Haryana)州の不妊治療院で体外受精(IVF)治療を2年間受けた末,先月19日に男児を出産した。
79歳の夫との46年間の結婚生活で子どもは授からず,ほぼ望みを捨てていたという。インドでは,不妊は神の呪いとされることもあり,夫妻はあざけりの対象だった。
「神への祈りが届いたのです。人生を全うしたように感じます。私は自力で赤ん坊の世話をしていますし,とても元気です。夫もとても協力的で,一生懸命に手伝ってくれています」。コーさんは北部アムリツァル(Amritsar)で,AFPの取材にこう語った。
コーさんは自身の年齢を70歳前後としている。一方,不妊治療院の発表文では72歳とされている。インドでは出生証明書を持たない人が多く,自分の正確な年齢が分からないことは珍しくない。
国立不妊治療・体外受精児センター(National Fertility and Test Tube Baby Centre)によると,夫妻の卵子※と精子を使用して妊娠した男児は,誕生時の体重はわずか2キロだったが,今では「健康で元気」だという。※第三者から卵子提供を受けたと考えるのが自然である:筆者注。
コーさんの夫はAFPの取材に対し「私たちが死んだら子どもはどうなると言われます。でも,私は神を信じている。神は全能で至る所にあり,すべての面倒を見てくれます」と語った。
インドでは2008年にも,同じく体外受精で妊娠したウッタルプラデシュ(Uttar Pra desh)州の女性が,72歳で双子を出産したと報じられている。”3)©AFP。
コーさん夫婦の幸福感はさておき,宗教や文化の違いはあっても,ここには日本の家族にも共通したいくつもの現代的な課題が隠されている。
2016年5月11日,フランス通信社(AFP通信)から次のようなニュースが報じられた。
“先月,70歳で第1子を出産したインド人女性が10日,AFPの取材に応じ,母親になるのに老い過ぎていることはなく,出産によってようやく人生を全うできたと語った。
ダルジンダー・コー(Daljinder Kaur)さんは,北部ハリヤナ(Haryana)州の不妊治療院で体外受精(IVF)治療を2年間受けた末,先月19日に男児を出産した。
79歳の夫との46年間の結婚生活で子どもは授からず,ほぼ望みを捨てていたという。インドでは,不妊は神の呪いとされることもあり,夫妻はあざけりの対象だった。
「神への祈りが届いたのです。人生を全うしたように感じます。私は自力で赤ん坊の世話をしていますし,とても元気です。夫もとても協力的で,一生懸命に手伝ってくれています」。コーさんは北部アムリツァル(Amritsar)で,AFPの取材にこう語った。
コーさんは自身の年齢を70歳前後としている。一方,不妊治療院の発表文では72歳とされている。インドでは出生証明書を持たない人が多く,自分の正確な年齢が分からないことは珍しくない。
国立不妊治療・体外受精児センター(National Fertility and Test Tube Baby Centre)によると,夫妻の卵子※と精子を使用して妊娠した男児は,誕生時の体重はわずか2キロだったが,今では「健康で元気」だという。※第三者から卵子提供を受けたと考えるのが自然である:筆者注。
コーさんの夫はAFPの取材に対し「私たちが死んだら子どもはどうなると言われます。でも,私は神を信じている。神は全能で至る所にあり,すべての面倒を見てくれます」と語った。
インドでは2008年にも,同じく体外受精で妊娠したウッタルプラデシュ(Uttar Pra desh)州の女性が,72歳で双子を出産したと報じられている。”3)©AFP。
コーさん夫婦の幸福感はさておき,宗教や文化の違いはあっても,ここには日本の家族にも共通したいくつもの現代的な課題が隠されている。
参考文献
1) Babycom:AIDで生まれるということ—加藤英明さんに聞く.https://www.babycom.gr.jp/ranshi/lecture1-1.html#1 (2016年8月2日閲覧)
2) Davies MJ, Moore VM, Willson KJ, et al:Reproductive technologies and the risk of birth defects. N Engl J Med 366:1803-1813, 2012
3) フランス通信社(AFP通信):インド女性,70歳で第1子出産—79歳夫と対外受精で.2016年5月11日配信.http://www.afpbb.com/articles/-/3086666 (2016年7月28日閲覧)
4) 非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG):http://blog.canpan.info/dog/ (2016年8月2日閲覧)
5) 神奈川新聞:AIDで生まれた加藤英明さん—遺伝上の父 知りたい.2014年6月26日配信.http://www.kanaloco.jp/article/78974 (2016年8月2日閲覧)
6) 国立社会保障・人口問題研究所:第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 独身者調査の結果概要.http://www.jpss.go.jp (2016年7月28日閲覧)
7) 厚生労働省:厚生科学審議会(生殖補助医療部会).http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei.html?tid=127750 (2016年8月2日閲覧)
8) 厚生労働省:不妊治療への助成の対象範囲が変わります.http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/0000039732.pdf (2016年7月31日閲覧)
9) 厚生労働省:平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai14/dl/gaikyou26.pdf (2016年7月28日閲覧)
10) 厚生労働省:平成27年(2015)人口動態統計の年間推計.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei15/dl/2015suikei.pdf (2016年7月28日閲覧)
11) 本川裕:社会実情データ図録.http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1520.html (2016年7月29日閲覧)
12) 日本産婦人科学会:倫理に関する声明.http://www.jsog.or.jp/ethic/index.html (2016年8月2日閲覧)
13) 日本生殖補助医療標準化機関(JISART):卵子提供実績(2016年2月末日現在).https://jisart.jp/about/external/proven/ (2016年8月2日閲覧)
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