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雑誌目次

雑誌文献

精神医学59巻1号

2017年01月発行

雑誌目次

巻頭言

精神医学のτέχνη(techné

著者: 大塚耕太郎

ページ範囲:P.2 - P.3

 古代ギリシアの医家ヒポクラテスが哲学者デモクリトスの件でアブデラの住民より「デモクリトスは狂気に陥っている」と相談され,狂気に陥っているか否かを確かめるため直接会いに行くという逸話が存在する。
 この場面は,後世ラ・フォンテーヌ『寓話(下)』(岩波文庫)の「デモクリトスとアブデラの人」でも取り上げられている。

特集 インターネット依存の現在

特集にあたって

著者: 樋口進

ページ範囲:P.5 - P.5

 IT技術の急速な進歩に伴い,インターネット(以下,ネット)依存は,爆発的に広がっていると推測されている。また,この問題は青少年でより深刻であることが知られている。我々が厚生労働科学研究の一環として2012年に全国約10万人の中高生に対して行った調査によると,男子生徒の6.2%,女子の9.8%の者にネット依存が強く疑われ,その数は約52万人と推計された。また,別の厚生労働科学研究調査によると,2008年から2013年の5年間に,成人でネット依存傾向にある者の数は1.5倍に膨れあがり,後者における推計値は420万にも及んだ。
 実際の臨床場面でも若者の受診が多く,私どもの専門外来では,中高生だけで全体の50%を,また,大学生まで加えると全体の70%を占めている。最も依存しているネットサービスは,依然としてオンラインゲームであるが,最近,スマートフォンのさまざまなサービスにはまっている者が増えてきている。ネット依存の学業,家庭内関係,健康などへの影響が大きく,遅刻,欠席,成績低下が多くの者にみられ,不登校,留年,退学,転校も少なからず認められる。また,ネット使用について親に対する暴言・暴力はほぼ全例にみられ,昼夜逆転,引きこもりなども稀ではない。さらに,犯罪につながるケースも認められる。合併精神障害を有する患者も一定の割合で認められ,ADHD,自閉症スペクトラム障害,社交不安などの合併頻度が高い。

ネット過剰使用と関連問題の疫学

著者: 尾崎米厚 ,   金城文 ,   桑原祐樹 ,   今本彩

ページ範囲:P.7 - P.13

はじめに
 インターネットは現代にはなくてはならないものになった。生活,仕事,学業などに多くの人が利用し,若者はほとんどが何らかの機器を保有している。ほとんどの人が曝露する要因の場合,どの程度の使用までが正常範囲でどこからが病的な使用かを決めることは難しい。使用時間や頻度だけで判断すると仕事や学業のため積極的に用いている人も病的使用になってしまう。DSM-Vなどでは診断基準が提唱されてはいるが,どのような状態を排他的な(他の疾病には分類されない)疾病単位と位置付けるかは専門家の間でも完全には一致していない8)。このような状況では,スクリーニングテストの開発も難しい。おそらく病的使用とは,長時間使うことによりその人が本来果たすべき社会的責任が果たせなくなる状態で,それが精神疾患などの別の疾患やひきこもりのような他にすることがないような状態により結果的に引き起こされた長時間使用ではないと判断されるようなものであろう。スクリーニングテストの開発には,暫定的に決められた診断基準作成後,長時間使用する調査対象者全員に精神科医が面談し,他の疾病を否定され,インターネット嗜癖の診断基準に合致する人とそうでない人を識別し,両者に候補スクリーニングテストを実施することが必要である。インターネット嗜癖は行為に対する嗜癖であるが,診断基準の作成には,長年の知見が蓄積された物質依存の概念が活用されるであろう。

ネット依存の概念,診断,症状

著者: 樋口進

ページ範囲:P.15 - P.22

ネット依存の概念をめぐる問題
1.ネット概念の混乱
1) 依存と嗜癖
 インターネット依存という用語が,色々な場面に登場するようになったのは,つい最近のことである。しかし,その話題性のためか,急速に人々に知られるようになり,今ではすっかり定着した感がある。しかし,このネット依存が何を意味するかについては,明確ではない。それこそ,10人いれば10通りの捉え方がある。

ネット依存の依存メカニズムおよび健康障害—脳画像研究から

著者: 藤原広臨 ,   鶴身孝介 ,   高橋英彦

ページ範囲:P.23 - P.30

はじめに
 近年,インターネットの過剰使用(以下,ネット嗜癖)は,韓国や本邦など東アジアを中心とした地域の,特に若年者において問題となっている。米国精神医学会による精神疾患の診断基準であるDSM-5でも,インターネットゲーム障害がconditions for future studyの欄に組み込まれるに至るなど,さらなる研究の知見などの蓄積によっては,近い将来に個別の疾患群として認識される可能性も考えられる現状である。ネット嗜癖の生物学的研究については,この現象が問題となっている東アジア地域からの報告を中心として,物質によらない依存症・嗜癖としての「行動嗜癖」に類するものであるという仮説に基づいたものが多い。本稿では,このネット嗜癖について,その神経基盤を,magnetic resonance imaging(MRI),positron emission tomography(PET),single photon emission computed tomography(SPECT)などの脳画像検査を用いて調べた知見を中心に紹介し,物質依存や他の行動嗜癖との共通点および差異という関連から若干の考察を加える。

眼科医からみたインターネットの諸問題

著者: 綾木雅彦 ,   坪田一男

ページ範囲:P.31 - P.36

はじめに
 インターネット(以下,ネット)を利用する機器ではほとんどlight emitting diode(LED)が背景光に使われている。ネット依存による精神的異常や異常行動とともに,長時間もしくは朝昼晩いつでも画面を見る利用者が大勢いる現在,視覚,眼組織,サーカディアンリズムへの影響も無視できない。従来からコンピュータ端末作業に伴うVDT症候群は問題であったが,携帯端末が爆発的に普及し,年齢性別を問わず小さい画面を眼から近い距離で操作するのが日常的になり,新たな問題が提起されるに至った。本稿では眼科医からみたネットの諸問題について解説する。

子どもとメディア—心身への影響と関わり方

著者: 中島匡博

ページ範囲:P.37 - P.43

はじめに
 この40〜50年の間に,子どもの外遊び空間は激減し,外遊びが減り,夜型ライフスタイルとなり,室内でテレビ・ゲーム機・携帯電話・スマートフォン(以下,スマホ)などの電子メディア(以下,メディア)に接することが多くなった。
 2005年頃から,休日夜遅くまでビデオやゲーム機に接し,倦怠感を訴える小学生がクリニックを受診するようになった。近年,スマホ・ゲーム機に深夜まで接し,体調不良を訴える中学生,夜遅くまでテレビ・ビデオ・親のスマホに接して,元気がない園児もみられる。幼児のいる家庭で1日中テレビがついて,待合室で幼児の傍らで,スマホやゲーム機の操作に夢中で子どもと向き合わない親もみられる。
 メディア機器の多様化・高機能化が進み,子どもの遊びや生活空間の中に浸透し,インターネット(以下,ネット)上でのトラブル,睡眠不足など生活リズムの乱れ,依存などさまざまな問題が顕在化している。メディア接触の長時間化と低年齢化が進み,長時間接触と短時間接触の二極化もみられる。
 ネット社会の中で,メディアの子どもの心身への影響について理解し,予防・治療の観点から,対応することが求められている。

ネット依存の治療—最新の進歩

著者: 中山秀紀 ,   樋口進

ページ範囲:P.45 - P.52

はじめに
 インターネット(以下,ネット)の大量の情報を相互にやりとりすることが可能であり,この十数年で急速に一般に広まった。ネットが我々の生活に格段の利便性をもたらしたのは間違いないが,問題点や悪影響も徐々に注目されつつあり,ネット依存もその一つである。ネット依存は青少年世代を中心に広まりつつあり,2012〜2013年にかけて行われた全国の中高生約10万人対象の調査ではYoungによる診断質問票で5項目以上当てはまるインターネット依存疑いの人は,男子の6.4%,女子の9.9%であったと報告されている13)。そして青少年世代に特によく関わる家庭や教育機関では深刻な問題として捉えつつある。一方で依存という疾患性があることや発達障害や精神疾患を合併しやすい1,4,18,19)ことなどから,医療機関での対処が求められることもある。本稿ではネット依存の治療に関する知見を述べる。

ネット依存の治療キャンプと地域対策

著者: 三原聡子 ,   北湯口孝 ,   樋口進

ページ範囲:P.53 - P.59

はじめに
 インターネット(以下,ネット)依存の治療法に関しては,その方法や有効性に関する研究の蓄積も世界的に乏しい。最近出版された治療に関するメタ解析結果によると,心理社会的治療の有効性は認められたが,解析の対象とした研究は全般的に研究対象者数も少なく,方法論も稚拙なものが多かったという7)。有効な予防教育の方法や,必要とされる地域対策に関しても,まだ手探りの段階である。しかしネットの過剰使用は,各国において大きな健康・社会問題になっており,既存の依存症治療の方法論などを参考にしながら各国においてさまざまな取り組みがなされ始めている。本稿では,ネット依存対策に関して世界をリードしている韓国におけるネット依存治療キャンプも含めた対策,わが国における治療キャンプや地域における対策などを略述する。

教育現場におけるスマホ依存対策

著者: 竹内和雄

ページ範囲:P.61 - P.69

はじめに
 筆者は中学校教員として約20年間,主に生徒指導主事として勤務した。その後,寝屋川市教育委員会指導主事として5年間勤務し,2012年から現職(専門は生徒指導)である。教員として長く子どもたちと接してきた上で,近年は子どもたちとネットの問題について深く関わっている5)
 各都道府県教育委員会の研修会で講師を務めたりすることも多く,つい先日は,中央教育審議会で「ポケモンGO」について話した。PTAに請われて,ネットと子どもについて話すことも多い。さらに,2014年からは,関西中心に各地の子どもたちを集めて,自分たちで自分たちのスマートフォン(スマホ)などの問題について考える,いわゆる「スマホサミット」の運営に関わることが増え,年間20回以上,子どもたちの話し合いをファシリテートしている。
 以上のように,教員,PTAをはじめとする保護者,子どもたち自身と,この種の問題で話すことが多い。本稿では,以上のようなさまざまな状況で見聞きした,子どもたちの現状と今後の方向性について述べることとする。
 また,本誌は医療関係者が主な読者と聞いている。医療関係者は,今回のテーマの「スマホ依存」のうち,重篤な事例に関わることが多いと思うが,私が関わっているのは,一般的な子どもたちの中で,やや課題を持っている程度の事例が多い。まずはそういった子どもたちの現状についてデータで示し,それに対する子どもたち自身の声を紹介する。

ネット依存家族の特徴と対応方法

著者: 前園真毅

ページ範囲:P.71 - P.77

はじめに
 ネット依存の治療において,家族は治療の導入,維持,予後において欠くことのできない重要なキーパーソンである。最初に依存問題に気付き医療機関などへ連絡し,依存者本人へ受診を働きかける人の多くは家族である。また家族は治療者に対し,依存の形成過程,心身状態,生活状況,人間関係を含む学校や職場などの社会的状況,家族機能の状況など治療に必要な多くの情報を提供できる。そして依存者の家族として治療の動機付けと介入の機会をより多く有し,新たな生活再建とその維持に必要なものを提供できる。その一方でネット依存家族のキーパーソンは傷つき放置されている可能性を考慮しなければならない。
 ネット依存の多くは10代から20代の青少年である。家族は,就学,就労の重要性を本人以上に強く意識しており,進級,進学,就労に関わる時期が近づくごとに将来への不安や焦りを抱えている。懸命に解決を図ろうとあらゆる手段を講じその都度,喜んだり,悲しんだりを繰り返している。対応によっては怒鳴られたり,脅されたり,無視されたり,ものを壊されたり,暴力を受けたりしている。慢性的な疲労感に加え「私の躾や対応が悪かった」などの過度な自責感,無力感,孤立感を募らせている。昼夜逆転傾向の本人が気になり,夜間熟睡することができていない家族も少なくない。そのような状態では本人に対応して良好な家族間のコミュニケーションを維持したり,冷静に建設的な話し合いを持つことはできない。また本人への対応方法は家族間で統一した同じ対応が望ましいが,それが困難な場合が多い。たとえば,母親は依存問題を重視しながらも父親は軽視していたり,単身赴任であったり,父親自身がコミュニケーションを苦手としていたり,母子家庭であったりする場合がある。本人や父親に自閉症スペクトラム傾向がないかなどの家族機能全体に問題がないか留意していく必要がある。家族自身が心身の健康を回復し,手ごたえを感じる対応ができるように必要な知識を学び,適切な評価や支援を第三者より連続的に受けることによって,家族は次第に機会を逃さず,適切な対応を積み重ねていくことができる。それが依存者本人を含めた家族全体の回復に繋がる可能性は大きい。今回ネット依存家族への対応について久里浜医療センター(以下,当センター)におけるネット依存家族への取り組みの中から述べていく。

短報

EscitalopramによるSSRI誘発性アパシー症候群が疑われた1症例

著者: 本間正教 ,   加藤秀明

ページ範囲:P.79 - P.83

抄録
 1990年にHoehn-Saricらは,fluvoxamineやfluoxetineといったセロトニン再取り込み阻害薬(以下,SSRI)投与中の患者5例にapathyが出現したことを報告した。今回,20歳台後半の男性の大うつ病患者に対し,escitalopramを投与したところ順調に改善し一旦寛解したものの,誘因なく急速に意欲低下を主とするapathyが出現したため,同剤を減量し,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるduloxetineを上乗せしたところapathyが速やかに改善した症例を経験した。SSRIの有害事象としてのSSRI-induced apathy syndromeは海外で複数例報告されているが,本邦では少なく,escitalopramによる報告はない。SSRIにて治療中で,apathyを主とする病状悪化をみた場合は,本症の可能性を考慮する必要があることを指摘した。

退院時Body Mass Indexが予後良好の指標であった神経性無食欲症の1例

著者: 佐々木順 ,   松原敏郎 ,   渡邉義文

ページ範囲:P.85 - P.89

抄録
 神経性無食欲症による低体重は身体機能を低下させ,患者のQOLを著しく阻害するが,入院治療によりどの程度まで体重を回復させれば予後が良いかは不明である。今回我々は20年以上前に発病し,低体重で退院後,再入院を繰り返していた神経性無食欲症の女性において,既報を参考に退院体重をBody Mass Index 17に定め,行動療法を施行したところ,退院後,就労に結びつくなど良好な経過をたどった。退院後の予後指標として退院時体重が想定できると,治療者と患者家族が目標設定をしやすく,再入院を防いで患者の生活の質を上げることにつながり,臨床的に有用であると思われたため,臨床経過を示すとともに文献的考察を交え報告する。

回避・制限性食物摂取障害にrisperidoneが有効であった1例

著者: 新井薫 ,   肝付洋 ,   春日井基文 ,   中村雅之 ,   佐野輝

ページ範囲:P.91 - P.94

抄録
 回避・制限性食物摂取障害(avoidant/restrictive food intake disorder;ARFID)はDSM-5において追加されたボディイメージの歪みがない摂食障害である。思春期発症のARFIDの19歳女性の1例を提示する。患者は腹部の手術と腸閉塞の既往を持ち,15歳から食後の腹痛を恐れて食事を制限するようになった。SSRIやbenzodiazepineで治療されたが十分に反応しなかった。19歳時にrisperidone 1mgの投与を契機に腹痛に対する不安が軽減し,食事摂取が可能になった。ARFIDに対して抗精神病薬が治療の選択肢となり得ることが示唆された。

「精神医学」への手紙

内因性うつ病の「身体症状」と「生気悲哀」について

著者: 田中恒孝

ページ範囲:P.95 - P.95

 「精神医学」58巻8号の展望「うつ病と頭痛—病態生理および抗うつ薬の薬効からの考察」1)を読み,うつ病という精神障害と頭痛という身体症状を結びつけて検討していることに興味を持った。さらに両者の関係を疫学・病態の知見と,治療的観点から考察した生物学的視点にも興味がそそられた。高橋4)が躁うつ病の示す身体症状を調べた研究でも,頭痛を含む身体症状が多発することを強調し,情動に関係する脳部位として帯状回,海馬,扁桃核,視床下部などを想定している。
 一方,Schneider3)は循環病(従来診断による躁うつ病)性うつ病は反応性うつ病と異なり,身体感覚や身体感情に基づく生気悲哀vitale Traurigkeit(頭痛など自律神経症状を含む生命感情の抑うつ)に起因しているという。うつ病の生気悲哀に注目した記述は少なくなく治療的には「励まし」は無効で,抗うつ薬や電気けいれん療法が有効である3,5,6,7)。筆者の調査6)では循環病者35例中約31%が頭痛・頭重を示し,内因性うつ病にも躁うつ病性うつ病にも頭痛が認められた。躁うつ病は10〜30歳台に初発し,内因性・単極性うつ病は初老期〜老年期に初発するが,うつ病相における生気悲哀の内容は同一で,再発時にみられる生気悲哀内容は症例ごとに同一性・一様性が認められた。

書評

—児玉知之 著—戦略としての医療面接術—こうすればコミュニケーション能力は確実に向上する

著者: 新城名保美

ページ範囲:P.90 - P.90

 『戦略としての医療面接術』のタイトル通り,医療面接の著作です。しかしながら,従来の「医療面接」をテーマに扱った書籍とは異なり,著者自身の実際の経験に基づき深く洞察されており,通読してなるほど,そういう切り口もあったか,と深く感心しました。われわれが普段の臨床で応対する「患者・その家族」—その個性や社会環境などの背景要素の多様性に注目しています。
 「うまくいかない医療面接」を経験した際,医師としては,「あの患者・患者家族は変だから…」と自分を含め他の医療スタッフに説明付けようとしがちですが,うまくいかなかった医療面接は,われわれが医療面接上必ず確認しておかなければならなかった手順や態度を怠ったことが原因であったかもしれない。この著作はそれを実臨床で陥りがちな,さまざまなシチュエーションを提示することで,抽象論に終始することなく具体的に提示してくれています。通読後,今まで自分が経験してきた医療面接の失敗例を思い返しても,本書にて指摘されている「やってはいけないこと」がいくつも当てはまり,内省した次第です。

—宮内倫也 著—精神科臨床Q&A forビギナーズ—外来診療の疑問・悩みにお答えします!

著者: 佐藤健太

ページ範囲:P.96 - P.97

 精神科の若手向けの入門書という設定のようですが,総合診療医である評者が読んでもとても面白く,新たな発見や学びもたくさんありました。
 著者は以前にも初期研修医向けやプライマリケア医向け,精神科初学者向けの類書を書かれていますが,「単に教えたいことを書き連ね,言い放っておしまい」ではなく,いずれも若手の視点や悩みを熟知した上で「読者が読んで納得し,ふに落として,明日からの考え方や言動が確実に変わる」ことを意識して丁寧に丁寧に書かれているのが,本書にも貫かれている基本姿勢だと感じます。

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.36 - P.36

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。
ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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次号予告

ページ範囲:P.98 - P.98

編集後記

著者:

ページ範囲:P.102 - P.102

 「精神医学」は,研修医の頃から長年にわたって読み親しんできた医学雑誌であり,2017年の新年の第1号の編集後記を記すことができるのは,私にとってはたいへん光栄なことです。
 本号の巻頭言で,岩手医科大学の大塚耕太郎先生が,テレビでしばしば放映される医療ドラマの構図を説明した上で,「精神医療にあてはめて考えれば,症状を緩和するだけでなく,患者の主体性を大切にする,取り戻す,ということが中心的命題である」と記しています。また,大牟羅良氏の著書『ものいわぬ農民』を引用して,「(著者は,貧困にあえぐ寡黙な農民たちが)いろり端では自分の話を語りはじめることを知り,いつかはものが言える日が来ることを願っていた。こころの声を大切にし,それぞれの物語を聞くことは,主体としての主人公の尊厳を守ることであろう」と述べています。私は,この言葉の中に,精神科医の日々の仕事の本質があるように思われ,深く感銘を受けました。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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