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文献詳細

雑誌文献

精神医学59巻1号

2017年01月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

内因性うつ病の「身体症状」と「生気悲哀」について

著者: 田中恒孝1

所属機関: 1松南病院精神科

ページ範囲:P.95 - P.95

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 「精神医学」58巻8号の展望「うつ病と頭痛—病態生理および抗うつ薬の薬効からの考察」1)を読み,うつ病という精神障害と頭痛という身体症状を結びつけて検討していることに興味を持った。さらに両者の関係を疫学・病態の知見と,治療的観点から考察した生物学的視点にも興味がそそられた。高橋4)が躁うつ病の示す身体症状を調べた研究でも,頭痛を含む身体症状が多発することを強調し,情動に関係する脳部位として帯状回,海馬,扁桃核,視床下部などを想定している。
 一方,Schneider3)は循環病(従来診断による躁うつ病)性うつ病は反応性うつ病と異なり,身体感覚や身体感情に基づく生気悲哀vitale Traurigkeit(頭痛など自律神経症状を含む生命感情の抑うつ)に起因しているという。うつ病の生気悲哀に注目した記述は少なくなく治療的には「励まし」は無効で,抗うつ薬や電気けいれん療法が有効である3,5,6,7)。筆者の調査6)では循環病者35例中約31%が頭痛・頭重を示し,内因性うつ病にも躁うつ病性うつ病にも頭痛が認められた。躁うつ病は10〜30歳台に初発し,内因性・単極性うつ病は初老期〜老年期に初発するが,うつ病相における生気悲哀の内容は同一で,再発時にみられる生気悲哀内容は症例ごとに同一性・一様性が認められた。

参考文献

1) 原田英治,久我敦,樋口輝彦,他:うつ病と頭痛 病態生理および抗うつ薬の薬効からの考察.精神医学 58:665-676,2016
2) 古茶大樹,古野毅彦:退行期メランコリーについて.精神経誌 111:373-387,2014
3) Schneider K:Psychiatrische Vorlesungen für Ärzte. Thieme, Leibzig, 1936(西丸四方訳:臨床精神病理学序説.みすず書房,1977)
4) 高橋良:身体病理学Ⅰ.総論.新福尚武編:躁うつ病.医学書院,pp36-40,1972
5) 田中恒孝,宮坂義男,沖貴仁:生気悲哀を示した内因性うつ病7症例の検討.精神科治療学 29:679-683,2014
6) 田中恒孝,宮坂義男:生気悲哀に関する第二報.精神科治療学 31:1471-1476,2016
7) 田中容子,大前晋:うつ病と神経症圏における身体症状の鑑別—生気悲哀感の再評価.精神科治療学 31:337-344,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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