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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

DPATに求められるコンピテンシーとは—精神保健分野の専門家を対象としたDelphi調査の結果

著者: 福井貴子1 田中英三郎1 加藤寛1

所属機関: 1兵庫県こころのケアセンター

ページ範囲:P.925 - P.936

抄録
 2013年,厚生労働省は「災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領」を定め,都道府県等にDPATの体制整備と研修実施を求めた。しかし,活動要領には都道府県等が行う体制整備の詳細や具体的な研修カリキュラムが示されていない。関係者間であっても,DPATへの認識にはばらつきがあると考えられた。
 本研究では,Delphi法を用いてDPATのコンピテンシーについて合意形成を行うことを目的とし,全国の精神保健の専門家を対象に回答を求めた。全79項目のうち59項目が合意基準に達し,20項目が達しなかった。これは現時点における結果であり,今後も関係者間において継続した議論を行い,DPATの機能や目的の共通理解を進めることが求められる。

参考文献

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17) 渡路子:災害医療概論とDPATの活動意義.日精協誌 35:6-14, 2016

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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