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雑誌詳細

文献概要

私のカルテから

入院と外泊によるリハビリテーションで改善した高次脳機能障害の1例

著者: 伊藤陽1 新藤雅延2 吉田浩樹1 清水敬三1 大塚道人2 和知学3 長谷川まこと1

所属機関: 1新津信愛病院 2新潟市民病院精神科 3新潟信愛病院

ページ範囲:P.1073 - P.1078

はじめに
 高次脳機能障害とは,頭部外傷や脳血管障害などに起因する脳の器質的損傷により,失語・失行などの巣症状,注意障害や記憶障害などの欠落症状,理解・判断・遂行機能の障害,社会的行動障害などを呈する状態像を指す6)。2001〜2005年度に施行された高次脳機能障害支援モデル事業の調査8)によると,全国で約7万人と推計される18〜65歳の高次脳機能障害患者の原因疾患は,外傷性脳損傷が76.2%と最も多く,次いで脳血管障害17.0%,低酸素脳症2.8%と続く。この外傷性脳損傷による高次脳機能障害患者に関して,発症当初からかかわり,長期経過を追った報告は乏しい11)
 今回,筆者らは外傷性脳損傷後に高次脳機能障害を呈した症例の経過を約2年間フォローし,まず入院リハビリテーション(以下,リハビリ),次いで外泊の繰り返しによる在宅リハビリも行ったところ,著しい改善がみられたので報告する。なお患者および配偶者からは本報告に関して書面による同意を得ており,匿名性保持のため個人背景には変更が加えられている。

参考文献

1) Dhandapani SS, Manju D, Sharma BS, et al:Prognostic significance of age in traumatic brain injury. J Neurosci Rural Pract 3:131-135, 2012
2) Jennett B, Snoek J, Bond MR, et al:Disability after severe head injury:Observations on the use of the Glasgow outcome scale. J Neurol Neurosurg Psychiatry 44:285-293, 1981
3) 加賀信寛,小池麻美,村山奈美子,他:ワークサンプル幕張版 MWSの活用のために.障害者総合センター,各種教材・ツール・マニュアル等 No.32, 2010
4) 浜中淑彦:通過症候群.加藤正明,保崎秀夫,笠原嘉他編:増補版精神医学事典.弘文堂,pp456-457, 1985
5) 北上守俊:高次脳機能障害に対する職業職業リハビリテーションのアウトカムに関する研究—ワークサンプル幕張版の認知機能への影響に着目して.新潟医学会誌 130:523-534, 2016
6) 北川泰久,中島八十一,三村將監修:巻頭言—社会の中の高次脳機能障害.日医雑誌 145:1157, 2016
7) 高村政志,丸林徹,三原洋祐介,他:熊本県頭部外傷データーバンク—これまでの経過とこれからの課題.神経外傷 21:118-124, 1998
8) 中島八十一,寺島彰編:高次脳機能障害ハンドブック—診断・評価から自立支援まで.医学書院,pp1-20, 2006
9) 永廣信治,溝渕佳史:外傷と高次脳機能障害.日医雑誌 145:1197-1204, 2016
10) 丹羽正利,本田哲三,山下映子,他:1健忘症例に対するチームアプローチと作業療法の役割.作業療法ジャーナル 27:229-232, 1993
11) 宮永和夫:高次脳機能障害の概念と実態.臨床精神医学 35:113-120, 2006

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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