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文献詳細

雑誌文献

精神医学59巻12号

2017年12月発行

文献概要

短報

内腸骨動脈瘤および慢性腎不全を合併した気分障害患者に対して電気けいれん療法(ECT)が奏功した1例

著者: 西村健一郎1 栗田茂顕2 土井勉1 神垣伸1 大賀健市1 大盛航13 板垣圭13 森脇克行2 竹林実13

所属機関: 1国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター精神科 2国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター麻酔科 3国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター臨床研究部 精神神経科学

ページ範囲:P.1147 - P.1151

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抄録 腸骨動脈瘤患者に電気けいれん療法(ECT)を施行した報告例はない。症例は60歳台男性。妄想を伴ったうつ病エピソードを呈し,薬剤抵抗性で亜昏迷状態となったため,ECTを導入した。21mmの内腸骨動脈瘤および腎不全を合併していたため,動脈ラインを挿入しnicardipineを用いて厳密な血圧管理を行った。血圧の変動を抑えるため,鎮静薬propofolに麻薬を併用した。筋弛緩薬は,筋線維束攣縮による血中K値の上昇を抑えるため,少量のrocuronium投与後にsuxamethoniumを投与した。術後合併症なくECTを11回施行し,精神症状は改善し自宅退院となった。厳重に術中管理を行えば,腸骨動脈瘤および腎不全の合併患者においてもECTは治療選択肢となり得ると考えられた。

参考文献

1) American Psychiatric Association:Desk Reference to the Diagnostic Criteria from DSM-5.(髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の分類と診断の手引.医学書院,2014)
2) 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告)
3) 初音俊樹,森義雄,梅田幸生,他:最大径22mmで破裂した孤立性総腸骨動脈瘤の1例.J Jpn Coll Angiol 53:39-41, 2013
4) 樋口尚子,綿貫俊夫,井上宏治,他:未破裂脳動脈瘤を合併したうつ病患者に対して厳重な血圧管理下に電気けいれん療法(ECT)を施行した一例.精神科治療学 30:823-829, 2015
5) 駒井美砂,荒木奈帆,佐久間貴裕,他:腹部大動脈瘤を有する患者に対する修正型電気痙攣療法の麻酔経験.Cardiovasc Anesth 14:139, 2010
6) Mueller PS, Albin SM, Barnes RD, et al:Safety of electroconvulsive therapy in patients with un repaired abdominal aortic aneurysm. J ECT 25:165-169, 2009
7) 本橋伸高,粟田主一,一瀬邦弘,他:電気けいれん療法(ECT)推奨事項改訂版.精神経誌 115:586-600, 2013
8) 大賀健市,栗田茂顕,増田正幸,他:血液透析導入後に気分障害を発症し電気けいれん療法(ECT)を施行した1例.精神医学 58:219-223, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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