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文献詳細

雑誌文献

精神医学59巻2号

2017年02月発行

文献概要

オピニオン 精神科医にとっての薬物療法の意味

精神科薬物療法の限界

著者: 井上猛1

所属機関: 1東京医科大学精神医学分野

ページ範囲:P.132 - P.134

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はじめに
 1950年代から統合失調症,うつ病,不安神経症,不眠に対するさまざまな治療薬が発見された。その後,原型となる薬物をもとに,より特異的な作用機序を有し,副作用がより少ない薬物が多く開発され,発売されてきた。治療薬がなかった50年以上前に比べると精神科の治療は大きく進歩してきたといえるし,隔世の感がある。現在では,薬物療法と精神療法,リハビリテーション,ケースワークなどを総合した精神科治療が行われている。筆者は,精神科治療を展開する上で薬物療法はあくまでも回復へのきっかけを作ってくれるものであると認識している。したがって,薬物療法だけに頼らずに,常にその他の多くの治療法導入の可能性がないか,さまざまな治療法の組み合せができないかを考えるようにしている。つまり,精神科薬物療法はあくまでも精神科の総合的治療の一部であると思う。
 筆者は約29年間,臨床的および基礎的な精神薬理学を専門として研究してきた。このような経歴の筆者がどのように精神科薬物療法を考えているかを,私見として本稿で紹介したい。なお,さまざまな精神疾患のうち,主にうつ病を例に薬物療法の役割を論じたい。

参考文献

1) 井上猛,中川伸,小山司:大うつ病性障害の薬理/抗うつ薬.樋口輝彦,小山司監修,神庭重信,大森哲郎,加藤忠史編:臨床精神薬理ハンドブック(第2版).医学書院,pp158-178, 2009
2) Kirsch I, Deacon BJ, Huedo-Medina TB, et al:Initial severity and antidepressant benefits:A meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration. PLoS Med 5:e45, 2008
3) Marchesi C, De Panfilis C, Tonna M, et al:Is placebo useful in the treatment of major depression in clinical practice? Neuropsychiatr Dis Treat 9:915-920, 2013
4) 田中輝明,井上猛,鈴木克治,他:抗うつ薬によるactivation syndromeの臨床的意義—双極スペクトラム障害の観点から.精神経誌 109:730-742, 2007
5) 豊島邦義,清水祐輔,三井信幸,他:三環系抗うつ薬から選択的セロトニン再取り込み阻害薬へ置換した後に認知機能が改善したうつ病の1例.精神科治療学 18:238-243, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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