icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学59巻3号

2017年03月発行

文献概要

研究と報告

汎発性皮膚掻痒症を合併した老年期うつ病にmirtazapineが奏効した1例

著者: 佐藤研一1 赤羽晃寿1 栃木衛1 林直樹1 池淵恵美1

所属機関: 1帝京大学医学部精神神経科学講座

ページ範囲:P.259 - P.264

文献購入ページに移動
抄録
 汎発性皮膚掻痒症を合併した老年期うつ病の症例を経験した。その病像の中心はうつ病およびその身体症状(痒み)による不快感から生じた焦燥であり,これらの症状に対してmirtazapineが著効を示した。一方,その治療過程において,後に治療者の焦燥に対する認識と治療薬の選択,そして精神疾患に関連する皮膚症状についての知識といった問題点が浮き彫りになり,このことが寛解までに費やした時間に影響を及ぼした可能性があると考えられた。痒みはきわめて不快な感覚であり,速やかにかつ適切に対処すべき症状である。器質的な皮膚病変を認めない皮膚掻痒症は精神皮膚科学(psychodermatology)の対象疾患であり,治療には精神医学的介入が重要であることを本症例から学んだ。

参考文献

1) 荒木裕登,山中幸典:終末期がん患者の掻痒感にミルタザピンが有効であった1例.Palliative Care Research 7:510-513, 2012
2) Biondi M, Arcangeli T, Petrucci RM:Paroxetine in a case of psychogenic pruritus and neurotic excoriations. Psychother Psychosom 69:165-166, 2000
3) Davis MP, Frandsen JL, Walsh D, et al:Mirtazapine for pruritus. J Pain Symptom Manage 25:288-291, 2003
4) 堀川直史,加茂登志子:サイコデルマトロジー.医学のあゆみ 200:1163, 2009
5) 笠井達也:鬱病患者に見られた激しい掻痒発作.日皮会誌 109:802, 1999
6) 加茂登志子:サイコデルマトロジー.山脇成人編:新世紀の精神科治療第4巻.リエゾン精神医学とその治療学.中山書店,pp205-213, 2003
7) 川島眞,原田正太郎,丹後俊郎:掻痒の新しい判定基準を用いた患者日誌の使用経験.臨床皮膚科 56:692-697, 2002
8) 北村公一:高齢者の皮膚疾患 1)皮膚掻痒症—老人性皮膚掻痒症,外陰部皮膚掻痒症. Geriat Med 43:1159-1162, 2005
9) 西智弘,割田悦子,上元洵子,他:パロキセチン無効の掻痒に対しミルタザピンが著効した1例.Palliative Care Research 7:556-561, 2012
10) 境玲子,三木和平,相原道子:サイコデルマトロジー—皮膚科と精神科の連携.精神医学 56:535-544, 2014
11) 佐藤貴浩,横関博雄,片山一郎,他:汎発性皮膚掻痒症診療ガイドライン.日皮会誌 122:267-280, 2012
12) 上田諭:治療反応性からみた初老・老年期うつ病の亜型分類.臨床精神医学 42:881-888, 2013
13) 上田諭:老年期の焦燥型うつ病に抗うつ薬は有効ではない①—身体感情中心型.精神科臨床サービス 16:53-55, 2016
14) 渡邊衡一郎,野村健介:新薬mirtazapineの特徴—他の抗うつ薬との比較を中心に.臨床精神薬理 12:1721-1735, 2009
15) Zylic Z, Krajink M, Sorge AA, et al:Paroxetine in the treatment of severe non-dermatological pruritus:A randomized, controlled trial. J Pain Symptom Manage 26:1105-1112, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?