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文献詳細

雑誌文献

精神医学59巻3号

2017年03月発行

文献概要

資料

東日本大震災による放射能事故の被災地にある診療所での精神科医療—5年間の経験から

著者: 新村秀人12 佐久間啓2 三村將1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 2あさかホスピタル

ページ範囲:P.265 - P.274

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抄録
 福島県川内村では,東日本大震災の原発事故による全村避難の1年後に帰村を開始し,空白になった精神科医療サービスを再建すべく,村の診療所に月1回の心療内科外来を開設した。4年間で54回診察を行い,受診者はのべ951人(平均73.3歳)であった。診断はPTSDが少ない一方,遷延する慢性ストレス状態が多く,放射能事故の特性と考えた。受診者には高齢者が多く,認知症も目立ち,震災を期に地域の人口減少・高齢化が進んでいることを反映していた。川内村では,帰村者の高齢化率は40.3%に達し,高齢化の進む日本の将来の姿とも言える。連続的かつ継続的な精神科医療支援のためには,コンパクトな診療所モデルが有効と考えた。

参考文献

1) 福島民友新聞.2016年7月5日
2) 加藤寛:中・長期の支援:総論.酒井明夫,丹羽真一,松岡洋夫監修,災害時のメンタルヘルス.医学書院,pp167-172, 2016
3) 川内村教育委員会編:草野心平とかわうち.川内村,1988
4) 自然災害(中長期).金吉晴編:心的トラウマの理解とケア,第2版,じほう,pp85-94, 2001
5) 内閣府HP:http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2015/html/gaiyou/s1_1.html
6) 新村秀人,佐久間啓,三村將:災害時の避難所における地元精神科医療機関による拠点型支援モデル—福島県郡山市の大規模避難所支援の1年半後.日本精神科病院協会雑誌31:24-28, 2012
7) Niimura H, Sakuma K, Mimura M:Disaster mental health support model with initiatives of local psychiatry institutions:One years and a half support experience at a large-scale evacuation center in Koriyama, Fukushima prefecture. Journal of Japan Psychiatric Hospitals Association 31:47-52, 2012
8) 垂水沙梨,岸本泰士郎:強迫性障害に対する遠隔診療—レビューと取り組みの紹介.精神科治療学31:407-410, 2016
9) 月野木ルミ,村上義孝,早川岳人,他:疫学研究レビューからみた震災発生からの時間経過と疾患発生との関連.日本公衆衛生雑誌63:17-25, 2016
10) 融道男,中根允文,小見山実,他監訳:ICD-10精神および行動の障害—臨床記述と診断ガイドライン 新訂版.医学書院,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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