文献詳細
文献概要
紹介
前頭葉・実行機能プログラム(Frontal/Executive Program;FEP)日本語版の紹介
著者: 大宮秀淑12 傳田健三2 山家研司1 松本出3 宮島真貴12 松井三枝4
所属機関: 1特定医療法人北仁会旭山病院 2北海道大学大学院保健科学研究院 3まつもとメンタルクリニック 4金沢大学国際基幹教育院
ページ範囲:P.275 - P.281
文献購入ページに移動近年,統合失調症の認知機能障害への関心の高まりとともに,認知機能障害を改善するための認知リハビリテーションが注目されている3)。2010年にイタリアのフィレンツェで開催された国際統合失調症研究カンファレンス(Biennial Schizophrenia International Research Conference)において,広義の統合失調症に対する認知リハビリテーションは認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy;CRT)という名称ではじめて公式に「認知過程(注意,記憶,遂行機能,社会的認知ないしメタ認知)の持続と般化を伴った改善を目指す行動的トレーニングに基づいた介入」と定義された4)。CRTに関する研究は欧米を中心に行われており,介入効果に関するエビデンスが集積しつつある1,6,11,14)。オーストラリアの心理学者Delahuntyらは,さまざまな先行研究の知見を加味して統合失調症の認知機能障害に対する新たなトレーニングプログラムである「前頭葉・実行機能プログラム:Frontal/Executive Program」(以下,FEP)を開発した2)。FEPの有効性に関してはRCTによって確認されており13),FEPの日本語版は松井らが作成し出版されている5)。日本語版の有効性についても筆者らの研究によって確認されており7〜10),本稿ではその日本語版に基づいてFEPを紹介する。
FEPを実施する際は,出版社ホームページ(http://shinkoh-igaku.jp/inspection/fep.html)よりトレーニングセット一式を購入することによって可能となるが,セラピストの基準として,1)メンタルヘルス業務に携わる経験を有し,特に統合失調症患者を対象とした経験があること,2)自身の臨床実践の指針となる理論的モデルを利用できること,3)認知機能(遂行機能や注意,記憶)に関する心理学的モデルについて学習し,理解すること,4)機能水準の低い患者とでも一対一でトレーニングができること,といった必要条件が挙げられている。
実際のトレーニングの方法のデモンストレーションが公開され視聴可能となっている(https://www.youtube.com/watch?v=5oGA9KPzEGk)。今後は,FEPの適切な普及のためにFEP研修会の開催やFEP療法士といった認定資格の創設も検討されている。これらの実施によって本邦におけるFEPネットワークを拡大し,その臨床と研究を発展させていくことが重要課題である。
参考文献
掲載誌情報