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文献詳細

雑誌文献

精神医学59巻4号

2017年04月発行

文献概要

特集 改正道路交通法と医療の視点

統合失調症の自動車運転にかかわる法規制

著者: 三野進1

所属機関: 1みのクリニック

ページ範囲:P.293 - P.300

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はじめに
 精神疾患に対する資格取得上の欠格規定の多くは撤廃されたが,精神疾患への危険視を前提とする道路交通行政では,精神疾患名を挙げて免許を与えないとする欠格条項が残された。道路交通法施行令で統合失調症,そううつ病と特定し「自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないもの」に限って例外的に免許を認めるという規定を2001年から採用している。現実には,これらの疾患にある人の大部分は,運転免許を適正に取得し,生活を送る上で不可欠なものとして自動車を運転している。しかし,人身事故時や免許更新時に精神疾患にあり欠格に相当することが疑われると,主治医の診断書を要求されることになる。この診断書には,運転能力と症状の関係,将来予後を記載することが求められる。
 問題をさらに深刻にしているのが,「自動車運転死傷行為等処罰法」の存在である。この法には,てんかん,精神疾患など政令で定める病気の影響で「走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある」と認識して運転し,人を死傷させた場合に懲役15年といった重罰を課す規定が含まれる。これらの法改正は当該患者に重大な脅威を与えているが,精神科医療者にとっても,診断書記載などについて説明義務があり,欠格事由への知識と判断が必要となる。

参考文献

1) Drazkowski J:An overview of epilepsy and driving. Epilepsia 48(Suppl 9):10-12, 2007
2) Edlund MJ, Conrad C, Morris P:Accidents among schizophrenic outpatients. Compr Psychiatry 30:522-526, 1989
3) Epilepsy and Driving in Europe-A report of the Second European Working Group on Epilepsy and Driving, an advisory board to the Driving Licence Committee of the European Union. 2005
4) 法務省:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する比率に関するQ & A. http://www.moj.go.jp/content/000117471.pdf
5) 一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会:一定の症状を呈する病気等に係る運転免許制度の在り方に関する提言.(https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo4/7/teigen.pdf), 2012
6) 警察庁交通局運転免許課:一定の病気に係る免許の可否等の運用基準(https://www.npa.go.jp/annai/license_renewal/list3.pdf)
7) 警察庁交通局運転免許課:運転免許統計 平成27年版.(https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm)
8) 松井三枝,星野貴俊,片桐正敏,他:精神疾患における運転行動の実態と運転特性:統合失調症を中心に—平成25年度(本報告)タカタ財団助成研究論文集.pp1-45, 2013
9) 日本精神神経学会精神医療と法に関する委員会:道路交通法および道路交通法施行令の改正(平成14年6月1日施行)についての報告.精神経誌 106:812-847, 2004
10) 日本精神神経学会:患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン.(https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/20140625_guldeline.pdf), 2014
11) 総務省統計局:平成22年国勢調査 従業地・通学地による人口・産業集計結果 Ⅴ利用交通手段.pp23-24, 2012(http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kihon4/pdf/gaiyou.pdf)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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