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特集 認知行動療法の現在とこれから—医療現場への普及と質の確保に向けて
認知行動療法における治療の質の管理—さらなる普及とクオリティコントロールのために
著者: 菊地俊暁123
所属機関: 1国立研究開発法人日本医療研究開発機構 2一般社団法人認知行動療法研修開発センター 3慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
ページ範囲:P.405 - P.412
文献購入ページに移動認知行動療法(CBT)は,近年うつ病や不安症に対する治療として医療現場で用いられるだけでなく,介護・福祉分野や企業,学校など,広く活用されるようになっている。徐々に普及している中,しかし大きくは二つの問題を抱えている。一つは治療として実施可能な医療施設が限定されていること,もう一つは治療としての質の担保をどのようにしていくか,ということである。
前者の実施可能な施設が限られているという問題は,診療報酬とも密接に絡む。40〜50分,医師がCBTを行うことが診療所や病院の経営にとってプラスとなり得るかは甚だ疑問がある。昨年から看護師による実施が実質的に認められたが,要件の厳しさや,病棟配置,シフト勤務という勤務上の問題から,なかなか実施できる医療機関が少ないのが現状である。有効性は確認され,また医療経済的にも有用な治療であることは疑いがなく,さらなる普及のためには看護師以外の職種による実施が可能となることが求められるだろう。
後者の質の担保,という点は,今後の普及と並行して重要な要素の一つである。それぞれの治療者が独自の方法で行うのでは,認知行動療法という枠組みの中で勝手な治療が行われているにすぎない。一定レベル以上の治療が多くの施設で行われるようにするためには,研修システムが確立し,適切な知識の獲得ができ,また指導者からのスーパーバイズが受けられる必要があるだろう。またさらに自己研鑽や集団での学習の場を整備していくことも望まれる。
本稿では,治療の質とはどのようなものか,また客観的に評価するためにはどのようにすべきか,さらに現在行われている厚生労働省研修事業におけるCBTの技能獲得について触れ,どのように質を管理・向上していくべきか考えていきたい。
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