文献詳細
特集 認知行動療法の現在とこれから—医療現場への普及と質の確保に向けて
文献概要
本邦における認知行動療法の歩みと現況
わが国で認知行動療法が注目されるようになったのは2000年代に入ってからのことである。2004年(平成16年度)から始まった厚生労働科学研究費補助金「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」,「精神療法の有効性の確立と普及に関する研究」,「認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究」(平成25〜27年度),(すべて主任研究者:大野裕)と続く一連の研究成果を受け,2010年度の診療報酬改定で,熟練した医師が30分以上をかけてうつ病に対する認知行動療法を行った場合に16回に限り診療報酬を算定できることになった。2016年度の改定では,うつ病に加えて,パニック障害,社会不安障害,強迫性障害,心的外傷後ストレス障害に医師が認知行動療法を行った場合に診療報酬が算定されることになった。
しかし,こうした定型的認知行動療法を実践する専門家の育成には膨大な時間と費用がかかる。2011年以降,個人認知行動療法の専門家を育成する厚生労働省認知療法・認知行動療法研修事業が実施されてきたが,大野の総説(本誌p399-403)にあるように,国民のニーズに十分に応えられるまでに至っていない。
わが国で認知行動療法が注目されるようになったのは2000年代に入ってからのことである。2004年(平成16年度)から始まった厚生労働科学研究費補助金「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」,「精神療法の有効性の確立と普及に関する研究」,「認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究」(平成25〜27年度),(すべて主任研究者:大野裕)と続く一連の研究成果を受け,2010年度の診療報酬改定で,熟練した医師が30分以上をかけてうつ病に対する認知行動療法を行った場合に16回に限り診療報酬を算定できることになった。2016年度の改定では,うつ病に加えて,パニック障害,社会不安障害,強迫性障害,心的外傷後ストレス障害に医師が認知行動療法を行った場合に診療報酬が算定されることになった。
しかし,こうした定型的認知行動療法を実践する専門家の育成には膨大な時間と費用がかかる。2011年以降,個人認知行動療法の専門家を育成する厚生労働省認知療法・認知行動療法研修事業が実施されてきたが,大野の総説(本誌p399-403)にあるように,国民のニーズに十分に応えられるまでに至っていない。
参考文献
1) DeRubeis RJ, Webb CA, Tang TZ, et al:Cognitive therapy. In:Dobson KS, ed. Handbook of Cognitive-Behavioral Therapies. Guilford Press, New York, pp277-316, 2010
2) 藤澤大介:精神療法の有効性の確立と普及に関する研究.認知行動療法の研修システムに関する研究.平成24年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(主任研究者:大野裕)分担報告書,2012
3) 堀越勝,田島美幸,藤澤大介,他:精神科医療におけるコメディカルスタッフの認知行動療法実施の現状および今後の教育体制.認知療法研究 9:134-145, 2016
4) 厚生労働省:公認心理師カリキュラム等検討会. http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai.html?tid=380707(2017年4月2日閲覧)
5) 中島恵子:一般身体医療における認知行動療法とチーム医療—リハビリテーション医療における認知行動療法.認知療法研究 6:128-130, 2013
6) 中尾重嗣,中川敦夫,大野裕:コンピュータ認知行動療法の展開:インターネット支援型認知行動療法の可能性.臨床精神医学 45:1281-1286, 2016
7) 日本看護系大学協議会:高度実践看護師教育課程審査要綱平成29年度版.2017(http://www.janpu.or.jp/download/pdf/cns.pdf)
8) 日本精神科看護協会:精神科認定看護師制度. http://www.jpna.jp/education/certified-nurse.html(2017年2月27日閲覧)
9) 岡田佳詠,白石裕子,國方弘子,他:看護師の認知行動療法実践者の養成のための教育プログラムの開発.公益財団法人三菱財団2014年度事業・研究報告書,2014
10) 岡田佳詠,白石裕子,國方弘子,他:看護師の認知行動療法実践者の養成のための教育プログラムの開発.公益財団法人三菱財団2014年度事業・研究報告書,2015
11) 大野裕:認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究.厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(主任研究者:大野裕)平成27年度総括・分担研究報告書,2015
12) 大野裕,田中克俊:保健,医療,福祉,教育にいかす簡易型認知行動療法実践マニュアル.きずな出版,2017
13) 白石裕子,岡田佳詠,加藤沙弥佳:看護職のための認知行動療法の研修の構造化と実践の試み.認知療法研究 7:35-44, 2014
14) 田島美幸:認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究.精神保健福祉士が認知療法・認知行動療法を行う際の問題点の整理と対策調査.厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(主任研究者:大野裕)平成27年度総括・分担研究報告書,2015
15) Weissman MM, Verdeli H, Gameroff MJ, et al:National survey of psychotherapy training in psychiatry, psychology, and social work. Arch Gen Psychiatry 63:925-934, 2006
掲載誌情報