文献詳細
文献概要
特集 国連障害者権利条約と権利ベースのアプローチ
精神障害とともに生きる人々のための権利ベースのアプローチ—精神保健医療福祉領域のソーシャルワークを中心に
著者: 岩崎香1
所属機関: 1早稲田大学人間科学学術院
ページ範囲:P.731 - P.737
文献購入ページに移動はじめに
障害者権利条約に示されている社会モデルに根差した支援について,社会福祉領域では国際連合(以下,国連)での条約採択以前から,専門職養成の中で取り上げてきた。しかし,理念と実践には大きな溝があり,それは未だに埋められてはいない。権利条約に示されている障害のある人とない人の平等が実現するには,私たち支援者にも乗り越えなければならない課題があり,それは私たちが単独で取り組むだけでは解消することが困難なものも多くある。目の前で支援を求めている人たちに対する支援だけでなく,同じ社会に生きている人たちの理解を得ていくために私たちにできることは何かを考え,実践していく必要がある。
権利条約の批准によって,一歩前に進んだ感はあるが,今後着実な歩みを続けていくために,何をなすべきなのか。精神保健医療福祉領域におけるソーシャルワーカー(精神保健福祉士;PSW)の歴史と現状を踏まえつつ考えてみたい。
障害者権利条約に示されている社会モデルに根差した支援について,社会福祉領域では国際連合(以下,国連)での条約採択以前から,専門職養成の中で取り上げてきた。しかし,理念と実践には大きな溝があり,それは未だに埋められてはいない。権利条約に示されている障害のある人とない人の平等が実現するには,私たち支援者にも乗り越えなければならない課題があり,それは私たちが単独で取り組むだけでは解消することが困難なものも多くある。目の前で支援を求めている人たちに対する支援だけでなく,同じ社会に生きている人たちの理解を得ていくために私たちにできることは何かを考え,実践していく必要がある。
権利条約の批准によって,一歩前に進んだ感はあるが,今後着実な歩みを続けていくために,何をなすべきなのか。精神保健医療福祉領域におけるソーシャルワーカー(精神保健福祉士;PSW)の歴史と現状を踏まえつつ考えてみたい。
参考文献
1) 秋山智久:権利擁護とソーシャルワーカーの果たす役割—アドボカシーを中心に.社会福祉研究75:23-33,1999
2) Cox EO, Parsons JR:Empowerment-Oriented Social Work Practice With the Elderly. Brooks/Cole Publishing Co, CA, 1994(小松源助監訳:高齢者エンパワーメントの基礎—ソーシャルワーク実践の発展を目指して.相川書房,1997)
3) 平成27年度厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)研究報告書:訪問による自立訓練(生活訓練)を活用した地域移行及び地域生活支援の在り方に関する研究.研究代表者:岩崎香,2016
4) 岩崎香:人権を擁護するソーシャルワーカーの役割と機能—精神保健福祉領域における実践過程を通して.中央法規出版,2010
5) 公益社団法人日本精神保健福祉士協会:ホームページ.http://www.japsw.or.jp/syokai/teican.htm(2017年6月10日アクセス)
6) 公益財団法人社会福祉試験・振興センター:ホームページ.http://www.sssc.or.jp/touroku/pdf/pdf_t04.pdf(2017年6月8日アクセス)
7) 小西加保留:意思決定支援ガイドラインのための基礎研究報告(第1部)日本弁護士連合会第58回人権擁護大会シンポジウム第2分科会資料3.p31,2015 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/58th_keynote_report2_cd_3.pdf(2017年6月12日アクセス)
8) 厚生労働省社会・援護局:障発0331第15号平成29年3月31日,障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドラインについて.http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000159854.pdf(2017年6月8日アクセス)
9) 厚生労働省:『「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)』を取りまとめました,http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000150538.html(2017年6月13日アクセス)
10) Margolin L:Under the Cover of Kindness:The Invention of Social Work(Knowledge, Disciplinarity and Beyond), University of Virginia Press, VA, 1997(中河伸俊,上野加代子,足立佳美訳:ソーシャルワークの社会的構築—優しさの名のもとに.明石書店,2003
11) 宮川数君:ケースワークとアドボカシー.大塚達雄,岡田藤太郎編:ケースワーク論—日本的展開をめざして.ミネルヴァ書房,pp33-46,1978
12) NASW Ad Hoc Committee on Advocacy:The Social Worker as Advocate:Champion of social Victims. Soc Work 14:16-22, 1969
13) 日本弁護士連合会:障害者差別解消法の成立にあたっての会長声明.2013, https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130619.html(2017年6月15日アクセス)
14) 野口裕二:物語としてのケア—ナラティヴ・アプローチの世界へ.医学書院,2002
15) Rapp C:The Strengths ModelCase Management with People Suffering from Severe and Persistent Mental Illness. Oxford University Press, Oxford, 1997(江畑敬介監訳,濱田龍之介,他(訳):精神障害者のためのケースマネージメント.金剛出版,1998)
16) 定藤丈弘:ソーシャルワークとアドボカシー.社会福祉研究30:141-146,1982
17) 柴田洋弥:知的障害者等の意思決定支援について.発達障害研究34:261-272,2012
18) Solomon B:Black Empowerment:Social Work in Oppressed Communities. Columbia University Press, New York, 1976
19) 谷中輝雄:生活支援—精神障害者生活支援の理念と方法.やどかり出版,pp148-149,1996
掲載誌情報