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研究と報告
一離人神経症者における決断の意義について
著者: 遠坂治夫1
所属機関: 1三重県立大学医学部付属塩浜病院精神科
ページ範囲:P.903 - P.906
文献購入ページに移動 M. Bleulerは周知の1951年の総説において,分裂病研究は分裂病群Schizophreniegruppeの個々の疾患の研究に向けられるべきであり,さらにもまして個々の分裂病者の個人的問題に向けられるべきだと述べた。Pauleikhoffは精神病の症候論的考察法symptomatologische Betrachtungsweiseに対して個々人的考察法personale Betrachtungsweiseを対置し,精神病的諸現象をまずPersonの統一的全体の障害として考察し,とくにPsychoseとPersonとの間の直接的関係を重視すべきことを説いた。KiskerやHäfnerらの分裂病体験についての最近のすぐれた研究が,個々の患者の共世界との関連についての患者個人において起こる変容の精細な検討に根柢をおいていることはこと新しくいうまでもない。精神病の領域においては,ことに分裂病については,すでにBinswanger,Storchらの現存在分析による個々症例の精密な記載と考察があり,Zutt,Kulenkampffらの一連の了解人間学的研究もまた本来病者のPersonに視点をおいたものとみなされねばならない。精神分析が神経症のみならず精神病の分析においても古くより個々の患者の分析・治療過程において,もつぱらその患者個人,および治療者や共世界との関係を取扱つてきたことはいうまでもない。
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