文献詳細
紹介
文献概要
Aristotelesの著作のなかから心理学的,精神病理学的記載を求めるならばDe Anima,Parva NaturaliaあるいはNicomachean Ethicsのある部分などがあげられようが,今回はProblemataのなかのMelancholiaの記載を紹介する。ただしProblemata(問題集(はアリストテレス全集には含まれているものの,かれ自身の筆によるものでないことは諸家の認めるところである。38巻からなる「問題集」はこの大哲学者を祖とするペリパトス学派の所産であり,編纂をかさねられて現在のかたちをとつたのはおそらくAD 5世紀ごろであろうという(Hett)。本書にはじつにさまざまの問題が論ぜられているが,とくに医学的,生理学的主題も少なくない。通読してみると鋭利な洞察がある反面,幼稚と思われる議論もあつて一様でないが,それにしても古代ギリシャ人の好奇心,求知心,質問癖にはあらためて感じ入らざるをえない。
ここに訳した部分はProblemata XXX, 1でメランコリアについて論じており,CiceroやPlutarch以来,よく引用されるところである。Ciceroの言を信ずるとすれば(Tuscul. Disput. I, 33)**,少なくともこの部分はAristoteles自身の意見であるかもしれない。本文の冒頭にある「天才とメランコリア(または狂気)」の主題は以後二千年来,諸家の好んで論ずるところとなつている。
ここに訳した部分はProblemata XXX, 1でメランコリアについて論じており,CiceroやPlutarch以来,よく引用されるところである。Ciceroの言を信ずるとすれば(Tuscul. Disput. I, 33)**,少なくともこの部分はAristoteles自身の意見であるかもしれない。本文の冒頭にある「天才とメランコリア(または狂気)」の主題は以後二千年来,諸家の好んで論ずるところとなつている。
掲載誌情報