文献詳細
特集 神経症の日本的特性
昭和38年精神病理懇話会より
文献概要
I.はじめに
私は主として,日本の文化型式がどのような意味で,日本における神経症を特色づけているかに論点を限定し,考究の出発点として"家"を選び,考察を進めたいと思う。
いままで,家は家族制度または家族関係としておもに法制史的・社会史的・経済史的・文化史的見地から考察され,したがつて家における心理状況も,このような歴史的,時間的観点に立つて理解されてきた。
このようなアプローチが,それぞれの妥当性をもち,それぞれの側面からの照明を与えて,われわれの理解を進めてくれたことは事実である。
しかし,ここで私は,家を家族という人間集団が生きている空間としてとらえ,家における精神状況を,その空間的状況との関係において,すなわち空間的な側面から理解しようとこころみた。もとより,このようなアプローチは,さらに各文化圏における家のありかたとの比較考察を要求するものであり,さきにあげたさまざまなアプローチによる諸見解との綜合的考察も要請されるのは当然であるが,さしあたり,考察の対象を日本の家の空間的側面にかぎつて出発したい。
私は主として,日本の文化型式がどのような意味で,日本における神経症を特色づけているかに論点を限定し,考究の出発点として"家"を選び,考察を進めたいと思う。
いままで,家は家族制度または家族関係としておもに法制史的・社会史的・経済史的・文化史的見地から考察され,したがつて家における心理状況も,このような歴史的,時間的観点に立つて理解されてきた。
このようなアプローチが,それぞれの妥当性をもち,それぞれの側面からの照明を与えて,われわれの理解を進めてくれたことは事実である。
しかし,ここで私は,家を家族という人間集団が生きている空間としてとらえ,家における精神状況を,その空間的状況との関係において,すなわち空間的な側面から理解しようとこころみた。もとより,このようなアプローチは,さらに各文化圏における家のありかたとの比較考察を要求するものであり,さきにあげたさまざまなアプローチによる諸見解との綜合的考察も要請されるのは当然であるが,さしあたり,考察の対象を日本の家の空間的側面にかぎつて出発したい。
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