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研究と報告
慢性meprobamate中毒における禁断症状について
著者: 鳥居方策1 大塚良作1 岸嘉典1 中川昌一郎1
所属機関: 1金沢大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.283 - P.287
文献購入ページに移動meprobamateは種々のtranquilizerのうちでは毒性や副作用の少ないものの一つであるとされている。meprobamateがこんにち相当広く用いられているのは,もちろんこの薬剤が種々の疾患に対して有効なためであろうが,副作用や毒性の少ないことも理由の一つとしてあげることができよう。しかし,1956年にLemere12)はmeprobamateには嗜癖を形成する性質のあることを指摘するとともに,禁断症状としてけいれん発作を呈した慢性meprobamate中毒の1例を報告した。また,BarsaおよびKline1)も25人の分裂病患者におけるmeprobamateの臨床試験で6人が本剤の投与中止後にけいれん発作を起こしたことを報告している。その後,このような臨床報告が相ついで行なわれ2)3)5)6)8)14)19)23),また,動物実験においても多量のmeprobamateの投与を急に中止した場合にはけいれん発作の起こりやすいことが確かめられた4)20)。
わが国においても,成瀬17)はmeprobamateの投与を受けた患者のなかには本剤の服薬をいつまでも,希求したもののあることを述べ,嗜癖形成の傾向を示唆した。その後,奥村および池田18)は禁断症状としてけいれん発作を呈した慢性meprobamate中毒の1例を報告し,また,池田ら9)は長期にわたる大量のmeprobamateの服用を中止したのち,比較的少量のmegimideの静注によつてけいれん発作を呈した症例を報告した。
最近,われわれは大量のmeprobamateをかなり長期間服用したのち,おそらく急に服薬を中止したためにけいれん発作を起こしたと考えられる2例,ならびに大量のmeprobamateの服用が,その後のけいれん発作の発現にある程度関係していると思われる1例を経験したのでここに報告する。
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