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文献詳細

雑誌文献

精神医学6巻4号

1964年04月発行

文献概要

研究と報告

神経症に続発する慢性軽うつ状態

著者: 平沢一1

所属機関: 1京都大学医学部精神科

ページ範囲:P.289 - P.295

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 躁うつ病のなかにはかならずしも予後のよくない症例があることは,注意深い観察者によりしばしば指摘されている。定型的なうつ週期の症状がまつたくとれたと思われる例においても,いつまでも患者が発病前と比べて元気がなく,積極性に欠けるのを自覚していることがある。この状態は,これまで衰弱状態(Kraepelin Dreyfus),慢性持続状態(Weitbrecht),あるいは慢性状態(Kinkelin)などと記載されている。
 われわれはこれを慢性軽うつ状態とよんでいる。この特徴としてはつぎの諸点があげられる。(1)現在の人格水準の低下した前に,定型的なうつ週期がある。(2)軽症では患者はすでに仕事についており,一見まつたくなおつたと見えることも少なくないが,患者自身は発病前と比べて活発さ・元気さに欠けることをはつきりと自覚している。そしてこの人格水準の低下は,疲れやすい,根がつづかない,ちよつとした出来事にも動揺し,心の平静を失う,前には楽にできた仕事が容易にできず重荷になると患者に感じられる。(3)気分はなんとなく悲観的・消極的で,時には抑うつ的でさえもある。(4)しばしば眠りにくく,食事も進まない。つねに頭が重く,体がだるい。この身体の違和感がいちじるしくなり,心気的態度を生じることがある。(5)以上のごとき慢性軽うつ状態の症状は決して固定してしまうことなく,病勢は暫くよいときがつづくとまた後戻りして悪くなり,たえず一進一退の動揺をくりかえす。そして多くはしだいに快方に向かつていく。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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