icon fsr

雑誌詳細

文献概要

研究と報告

児童・思春期精神科で治療を受けている中学生の自尊感情に関する研究—ソーシャルスキル,居場所感との関連

著者: 菅谷智一1 森千鶴1

所属機関: 1筑波大学医学医療系

ページ範囲:P.1283 - P.1292

抄録 児童・思春期精神科で治療を受けている子どもは,自尊感情が低く,回復させる必要性が指摘されている。そこで,中学生を対象に自尊感情とソーシャルスキル,居場所感の関係を明らかにすることを目的とした。
 入院・外来通院中の208名の結果から自尊感情尺度(RSES-J)とコミュニケーション基礎スキル尺度,居場所感尺度との間に正の相関が認められ,パスモデルよりソーシャルスキルや友人関係が居場所感に影響を与え,居場所感が自尊感情に影響していることが示された。
 このことから,自尊感情を高めるためには,友人関係に着目した観察や,ソーシャルスキルへの介入,また居場所感を高める支援が重要であると考えられた。

参考文献

1)相川充:心の居場所としての学級づくり—ソーシャルスキルの観点から.児童心理 60(6):2-10, 2006
2)藤原武男,舟橋敬一:患者ニーズに合った子どもの心の診療体制の在り方およびその効果判定の方法に関する研究.子どもの心の診療に関する診療体制確保,専門的人材育成に関する研究 平成22年度総括・分担研究報告書.pp15-21, 2011
3)古荘純一:日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか.光文社,2009
4)粕谷貴志,河村茂雄:中学生の学校不適応とソーシャル・スキル及び自尊感情との関連—不登校群と一般群との比較.カウンセリング研究 37(2):107-114, 2004
5)小島亜希子,村松常司,吉田正他:中学生の日常ストレスとセルフエスティームに関する研究.愛知教育大学研究報告 教育科学 54:167-174, 2005
6)牧野幸志:中学生を対象としたコミュニケーション・スキル訓練の開発(1)—中学生のコミュニケーション・スキル,精神的健康の性差,学年差の検討—.経営情報研究 摂南大学経営情報学部論集 17(1):1-16, 2009
7)Mimura C, Griffiths P:A Japanese version of the Rosenberg Self-Esteem Scale:Translation and equivalence assessment. J Psychosomat Res 62:589-594, 2007
8)宮内俊一:問題行動とコミュニケーション—児童養護施設におけるソーシャルスキル・トレーニングの実践と成果.名寄市立大学紀要 7:37-44, 2013
9)村﨑良平,笹山龍太郎:児童の自尊感情を高める教育的実践研究.教育実践総合センター紀要 12:317-325, 2013
10)永田真由,齊藤万比古:思春期の子どもを持つ家族への助言.小児内科 43:935-938, 2011
11)日戸由刈:高機能自閉症の人たちへの発達支援—心理的活動拠点づくりへの支援における,心理士の役割.児童青年精神医学とその近接領域 54:342-348, 2013
12)Robins RW, Trzesniewski KH, Tracy JL, et al:Global Self-Esteem Across the Life Span. Psychol Aging 17:423-434, 2002
13)斎藤富由起:中学生における「居場所感」の構成要因と自己肯定感の関係.子どもの権利研究 11:87-94, 2007
14)清水將之:思春期・青年期と精神科医療.日本精神科病院協会雑誌 32:664-668, 2013
15)東海林渉,安達知郎,高橋恵子,他:中学生用コミュニケーション基礎スキル尺度の作成.教育心理学研究 60:137-152, 2012
16)曽山和彦:児童のメンタルヘルスに影響を及ぼす要因の抽出.名城大学教職センター紀要 7:13-24, 2010
17)住田正樹:子どもの「居場所」と対人関係.住田正樹,南博文編:子どもたちの「居場所」と対人的世界の現在.九州大学出版会,pp101-168, 2003
18)鈴木聡志,庄司一子:子どもの社会的スキルの内容について.教育相談研究 28:24-32, 1990
19)高野佳也:「居場所がない」解離性障害の思春期女性患者の入院治療.思春期青年期精神医学 13:169-170, 2003
20)田中究:児童精神医学の広がりに期待するもの 育ちと見守り.日本精神科病院協会雑誌 32:717-721, 2013
21)戸ヶ崎泰子,岡安孝弘,坂野雄二:中学生の社会的スキルと学校ストレスとの関係.健康心理学研究 10(1):23-32, 1997
22)徳田仁子:スクールカウンセリングを通して生活環境を整える—不登校生徒の「居場所」さがし.臨床心理学 4:213-217, 2004
23)富永幹人,北山修:青年期と「居場所」.住田正樹,南博文編:子どもたちの「居場所」と対人的世界の現在.九州大学出版会,pp381-400, 2003
24)富岡比呂子:児童の自己概念と自己効力感—学校適応感との関連性について.創大教育研究 22:79-93, 2013
25)内田知宏,上埜高志:Rosenberg自尊感情尺度の信頼性および妥当性の検証—Mimura & Griffiths訳の日本語版を用いて.東北大学大学院教育学研究科研究年報 58:257-266, 2010
26)渡部京太:並存する精神症状や精神科的な状態像に応じた治療・支援—反応性の不安や抑うつ.精神科臨床サービス 11:234-237, 2011
27)山岡俊英:大学生の居場所とセルフエスティームに関する一研究.佛教大学教育学部学会紀要 1:137-167, 2002
28)吉田友子:子どもが自尊感情をもって生きることを支援する.青木省三,村上伸治編:〈精神科臨床エキスパート〉専門医から学ぶ 児童・青年期患者の診方と対応.医学書院,pp44-51, 2012

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?