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雑誌目次

論文

精神医学60巻12号

2018年12月発行

雑誌目次

特集 精神科臨床から何を学び,何を継承し,精神医学を改革・改良できたか(Ⅱ)

統合失調症の脳画像研究

著者: 鈴木道雄

ページ範囲:P.1319 - P.1325

はじめに
 低侵襲の脳画像診断技術であるX線コンピュータ断層撮影(CT)により,統合失調症を対象とした最初の研究報告がなされたのは1976年であり,磁気共鳴画像(MRI)による最初の研究が報告されたのが1986年である。筆者は1993年の本誌に,「精神分裂病の画像解析」という総説を書いたことがあるが7),その内容を読み返してみると,その後の四半世紀における研究の進展にはまさに今昔の感がある。本稿では,40年あまりの歴史を持つに至った統合失調症の脳画像研究について,主として,病態生理の理解に果たした役割や精神科臨床とのかかわりの観点から記述する。しかし,現代の脳画像解析のモダリティは多岐に渡り,研究の数も膨大であり,脳画像研究全体について展望することは困難であるため,本稿では構造MRIを中心とした脳構造(形態)画像研究に絞って述べる。

クロザピン療法—承認が遅れた要因の検討ならびにその作用機序の解明研究の展望

著者: 三國雅彦

ページ範囲:P.1327 - P.1338

はじめに
 1952年のLaborit,Deleyらによる統合失調症に対するクロルプロマジン療法の発見はインスリンショック療法や電気けいれん療法しかなかった精神科医療を大きく変革し,その後のハロペリドールの成功によって,ドパミン受容体を,より選択的に,より強力に阻害する抗精神病薬の開発競争が展開されることになった。しかし,これらの抗精神病薬は後に第一世代と呼ばれることになるが,治療域の投与量で薬剤性パーキンソン症候群を呈する頻度が高く,抗パーキンソン病薬の併用を余儀なくされ,長期投与後には遅発性ジスキネジアなどの神経系の副作用の発生リスクが高まることが指摘されることとなった。1993年以降,治療域の投与量では薬剤性パーキンソン症候群を呈することの少ないリスペリドンなどの抗精神病薬が続々と上市されるようになり,第二世代の抗精神病薬と呼ばれることになったが,その原型が実は1958年に合成されたクロザピンである。西欧の各国で上市され,1970年代初頭にはわが国でも治験がなされていたが,8名の死亡例を含む16名の無顆粒球症の発症がフィンランドから報告されたため,1973年に販売中止,治験中止となった。ところがMeltzerらはこの全く忘れ去られていたクロザピンに関する全米共同研究グループを組織し,268例の治療抵抗性統合失調症について厳密な血液モニタリング下でクロザピンとクロルプロマジンの二重盲検比較試験を実施し,1988年に治療抵抗性統合失調症に対する安全なクロザピン療法を確立した13)。その結果,1990年には米国や英国で,副作用モニタリング下での治療抵抗性統合失調症治療薬としてクロザピンは承認され,患者と家族に大きな福音となり,TIME誌1992年7月6日号でも取り上げられ,次々と承認する国々が増えていった。しかし,わが国はリスペリドンなどの第二世代の抗精神病薬が1996年以降,欧米に遅れても3〜5年後には次々と承認されていったにもかかわらず,その原型であるクロザピンの承認は欧米より19年間も遅れ,世界標準の治療抵抗性統合失調症治療薬が2009年まで導入されてこなかったのである。この小論ではわが国での承認の遅れた要因,承認に至る経過と今後のいっそう安全な適正使用法の検討ならびにクロザピンの作用機序の解明研究の現状と将来に向けた取り組みについて略述したい。

クロザピン療法の実際の運用—クロザピン専門病棟を中心とした琉球病院での取り組み

著者: 木田直也 ,   村上優 ,   大鶴卓 ,   久保彩子 ,   石橋孝勇 ,   福治康秀

ページ範囲:P.1339 - P.1347

はじめに
 クロザピン(CLZ)は治療抵抗性統合失調症に唯一の適応を持つ抗精神病薬である。治療抵抗性とは,2種類以上の抗精神病薬を十分量・十分期間投与しても,Global Assessment of Functioning(GAF)尺度にて41点以上に相当する状態になったことがないものと定義される12)。日本でも2009年7月にCLZが上市されてから9年が経過した。2018年8月時点でのクロザリル患者モニタリングサービス(Clozaril Patient Monitoring Service:CPMS)の登録患者数は7,343人,登録医療機関数は486施設(患者登録済みは409施設)と増えている1)。ただ厚生労働省の2014年患者調査によれば,国内の医療機関で治療を受けている統合失調症患者数(類縁疾患も含む)は約77万人であり,そのうち治療抵抗性の患者は30%程度(約23万人)であると推計される2)が,これまでCLZ治療を受けたのは統合失調症患者全体の1%程度に留まる。対象患者は多いが,国内では治療が十分には普及していない状況である。
 琉球病院(以下,当院)では2010年2月から2018年9月までに延べ245例の治療抵抗性統合失調症患者にCLZ治療を行った。CLZの効果は高く3,5,7,8),重度の精神症状を有した患者でも,CLZ治療により精神症状が改善し,数年ぶりに退院をして就労をするなど社会復帰をしている例も増えている。これまでの臨床経験を踏まえ,今回は当院でのCLZ療法の実際の運用についてまとめたので報告を行う。
 なお本稿については,日本精神神経学会利益相反基準に照らして,開示するべき企業がないことを明記しておく。

発達障害

著者: 山﨑晃資

ページ範囲:P.1349 - P.1354

はじめに
 最近,発達障害が過度に注目され,操作的診断基準による安易な診断が行われる傾向が強まっている。しかし,発達障害の概念は混乱しており,さまざまな学会のシンポジウムでテーマとして取り上げられることが多くなったが,発達障害を真正面から論じ,問題点を明らかにしようとする試みは不十分である。
 さらに医師や専門家が「臨床への躊躇い」や「臨床への畏れ」を持たなくなってきたことも気になる。短時間の面接や行動観察で,「自閉症スペクトラム障害」や「発達障害」と安易に診断するようになった。米国精神医学会のDSM-Ⅳには「研修を受けていない人にDSM-Ⅳが機械的に用いられてはならない。…料理の本のように使われるためのものではない」と明記され,DSM-51)でも「診断を確定するためにDSMを使用するには,臨床の研修と経験が必要であり,…臨床的専門知識を必要とする」と述べられている。
 言うまでもないことであるが,精神科臨床で発達障害が疑われる場合には,まず母子健康手帳の記載を参考にしながら両親から発達歴・成育歴を可能な限り詳細に聴取し,何度も面接と行動観察を行い,家庭・保育所・幼稚園・学校・職場などにおけるその人の状態を可能な限り聞き取り,その人の理解を深めていくものである。発達歴が聞き取れないこともあるが,その場合には臨床家の知識と経験を総動員させて,その人の理解と対応を検討しなければならない7,8)

災害後のこころのケア—阪神・淡路大震災からの20年の歩み

著者: 加藤寛

ページ範囲:P.1355 - P.1361

はじめに
 1995年の阪神・淡路大震災は,災害に対する社会の認識を変え,多くの領域で体制を変える契機となった。本稿では,法制度や救急医療での変革を概観した後で,精神科医療・精神保健活動に「こころのケア」という言葉が与えられ,大きな社会的関心を集めるようになった経緯について振り返る。この災害では,早期には精神科救護所活動が行われた。全国から沢山の支援者が参加したこの活動では,コーディネート体制の脆弱性などの問題に直面した。また,復興期の精神保健活動には初めて公的資金が投入されたが,寄せ集めの組織は,活動の方針や方法論が定まらないなどの多くの困難に翻弄された。こうした課題がどのように克服されたのかを論じ,災害によって関心が高まった「こころのケア」が犯罪,暴力,虐待などの社会に潜む問題にも拡大されていった経緯についてまとめる。阪神・淡路大震災以後,自然災害後の精神保健活動は必要不可欠なものとして認識され,新たなシステムが整備されつつある。阪神・淡路大震災で直面した課題は克服されているのか,残された課題は何か,などを考える機会としたい。

阪神・淡路大震災から東日本大震災では何を継承し,どう対応したか

著者: 富田博秋

ページ範囲:P.1363 - P.1374

はじめに
 災害精神医学を,本特集「精神科臨床から何を学び,何を継承し,精神医学を改革・改良できたか」というテーマの中で,検討,考察するにあたって,まず,災害精神医学・医療がどのような医学・医療であるかという前提について検討,考察することから始める必要がある。
 医師法の第1条で医師の役割は「医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もつて国民の健康な生活を確保する」ものと定められているが,その責務を支える学問領域としての医学には自然科学としての医学の他に,社会科学としての医学,生命倫理,医学教育なども含まれる。災害の発生を想定して医療・保健体制を強靱化し,また,災害に対応できるよう備えておくこと,災害が発生した際の被災地域の公衆衛生の向上,増進に寄与し,被災地域住民の健康な生活を確保することも,医師の重要な役割であり,その責務を支える学問領域として,災害精神医学を構築,発展させていく必要がある。災害精神医学は,地域社会の基盤を揺るがす事象に起因する状態に対応するための学問であるが故に,自然科学としての医学の他に,社会科学としての医学,生命倫理,医学教育を包含する医学の広義性が端的に凝集される学問領域であることが必然となる。
 備えるべき災害ということについていえば,伊勢湾台風を契機に1961年に策定された災害対策基本法では災害を「暴風,竜巻,豪雨,豪雪,洪水,崖崩れ,土石流,高潮,地震,津波,噴火,地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と定義している。1997年には,「海上災害,航空災害,鉄道災害,道路災害,原子力災害,危険物等災害及び大規模な火事災害」についても,対象に加える修正が行われた。
 災害大国とも言える本邦においては,上記災害のうちのいくつかは局所災害として毎年のように起こり,その被災者の精神保健を如何に把握し,対応するかということも重要な課題である。一方,通常の医療保健体制が麻痺して現地の平時の医療保健体制では対応が困難となる広域激甚災害が発生した際に,本邦のそれまでの災害精神医学的備えが試されることになる。災害への備えは大きな災害を経るごとにその教訓に基づいて改善していくものである。阪神・淡路大震災は東日本大震災発災以前,災害精神医学領域に最も大きな影響を及ぼした災害と言えよう。本稿では,災害精神医学が包含する各領域について,阪神・淡路大震災を含むそれ以前の災害から得られたどのような知見が,東日本大震災が発生する前の備え,あるいは東日本大震災発生後の災害対応の中で継承されたのかについて検討を行う。

災害と精神医療

著者: 金吉晴

ページ範囲:P.1375 - P.1383

はじめに
 災害時の精神保健医療対応についてはこれまでも何度か意見を集約して発表しており,一部はガイドラインとして全国の自治体に配布されている10)。本稿ではその内容を再掲することは避け,いくつかの論点と国内外の動向を紹介することとしたい。
 災害とは自然界に生じる台風,地震などのハザードそれ自体ではなく,それによってもたらされる被害である。自然現象としてのハザードをコントロールすることは難しいが,被害を減少させることによって災害の規模をコントロールすることはある程度可能であり,精神保健医療活動もそのような災害対策の一環として位置付けられる。社会的には心のケアという言い方がなされているが,この概念は医学から社会へと広められたものではなく,むしろ狭義の精神医学的対応に限らない災害からの心理社会的な回復,あるいは人道的な心理支援の提供へのニーズ,期待を表している。しかしそのために医学的介入と人道支援の境界が曖昧となり,また現在ではその効果が否定されているが,デブリーフィングという災害直後の単回カウンセリングが将来のPTSDを予防するという説が阪神淡路大震災の当時,米国から伝えられたために,人道的に話を聞くことが医学的介入ともなるという誤解が一部に生じることとなった(この説はその後の研究によって否定されている)14)
 現在でもなお,社会一般の人々が心のケアに対して抱く期待には漠然としたところがあり,必ずしも特定の精神疾患の早期治療,予防だけが期待されているわけではなく,あたかも医学medicineの語源がmagicianであったことを想起させるような万能的な癒しへの期待が込められていることもある。Raphael13)は災害直後には被災地もそれ以外の社会もいわゆるハネムーン的な一体感,高揚感に包まれることを指摘したが,心のケアに対する関心の高まりも,基本的にはこうした災害後の一体感,連帯の中で被災者を支えようとする意識の反映でもある。このような事情のために,避難所で急性錯乱を起こした住民を精神医療チームが沈静化させ救急搬送するような行為を周囲の被災者が目にしたとき,適切に心のケアが行われたと歓迎されることは少なく,むしろ災害後の人道的な支援への素朴な期待が裏切られたと感じることにもなる。ここには平時から精神医療が抱えている難しさが浮き彫りにされているとも言える。すなわち,医学の一分野として身体科と並んで特定の精神疾患への適切な治療を行うのか,時には社会防衛的な役割も担うのか,あるいは多層的な心理社会支援の要として,被災者のウェルビーイングを取り戻す行為の一翼を担うのか,ということである。これらは二律背反的なものではなく,後者の支援が疾患としての転帰にも影響することは多くの精神疾患においてみられることであり,災害時にも該当する2)が,災害時の余裕の少ない状況の中でこれらをバランス良く組み合わせることは常に容易とは限らない。そうした役割の軽重は時相,状況によって変わり得るが,基本的には心理社会支援を幅広く提供し,災害後に生じた症状の自然回復を待つことが実際的である。災害後には人的,社会的ネットワークが寸断され,心理社会的な孤立が認められやすいことを考えると,狭義の精神医療も症状の軽減を通じて社会的ネットワークを回復するための試みであり,被災者がどのような人的,社会的資源に結びついており,医療以外のどのようなサポートを受けているのかを考慮することが理想ではある。なお,多くの国際的ガイドラインでは触れられていないが,医療先進国である日本に特有の事情として,災害以前からの医療継続がある。

研究と報告

社会保険労務士を対象とした職場復帰支援研修の有効性の検討—精神疾患による休職者に対する理解度・対応能力への影響

著者: 藤里紘子 ,   田島美幸 ,   岩元健一郎 ,   早坂佳津絵 ,   白川麻子 ,   吉原美沙紀 ,   今井杏理 ,   川﨑直樹 ,   平林直次 ,   堀越勝 ,   秋山剛

ページ範囲:P.1385 - P.1391

抄録 近年,特に専任の産業保健スタッフがいない中小企業・小規模事業所を中心に,社会保険労務士をメンタルヘルス対策にかかわる人材として活用する取り組みが検討されている。しかし,社会保険労務士は,メンタルヘルスに関する知識を十分に持ち合わせていないことも多い。そこで本研究では,社会保険労務士を対象に職場復帰支援研修を行い,それによって精神疾患による休職者に対する理解度や対応能力が高まるのか,その有効性を検討した。その結果,研修を受けることによって,精神疾患や,精神疾患から職場復帰する従業員への対応,リワークプログラムについての理解が深まり,そうした従業員を支援する自信が高まることが明らかとなった。

Perampanel投与後に精神症状を認めた知的障害を合併するてんかん患者の検討

著者: 河合三穂子 ,   兼本浩祐 ,   郷治洋子

ページ範囲:P.1393 - P.1401

抄録 ペランパネル(perampanel:PER)は,シナプス後膜のAMPA受容体に作用する新規の抗てんかん薬であり,日本国内の使用実績の報告は少ない。当院にてPERを使用した78名の患者のうち,PER投与後に精神症状を経験したのは5例であり,いずれも知的障害が併存する患者であった。知的障害の存在,元来の気質,CYP3A4を誘導する併用薬の中止などが精神症状の出現に関与する可能性と,また知的障害の重症度により,精神症状発現の忍容性と表出される症状が異なる可能性を考えた。今後さらなる症例の蓄積が待たれる。

資料

成人期ADHD症状評価スケールHokkaido ADHD Scale for Clinical Assessment in Psychiatry(HASCAP)について

著者: 館農勝 ,   中野育子 ,   白木淳子 ,   館農幸恵 ,   金澤潤一郎 ,   白石将毅 ,   河西千秋 ,   氏家武 ,   齊藤卓弥

ページ範囲:P.1403 - P.1411

抄録 近年,ADHDの診断を求めて精神科を受診する者の数が増えている。今回,ADHDの診断補助ツールとして活用可能な25項目から成る質問紙を開発した。質問紙はHokkaido ADHD Scale for Clinical Assessment in Psychiatry(HASCAP)と名付け,0点から4点の5件法で回答を求めた(100点満点)。ADHD群104名(平均63.4±15.8点)と健常対照群361名(平均27.5±17.5点)の結果から,感度,特異度を求め,カットオフを設定した。その結果,HASCAP合計点45点で,感度83.7%,特異度83.1%であった。今度,さらにデータを集積し,より実用的な質問紙にしていきたいと考える。

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目次

ページ範囲:P. - P.

次号予告

ページ範囲:P.1412 - P.1412

編集後記

著者:

ページ範囲:P.1416 - P.1416

 本号の特集は,先号に引き続き,「精神科臨床から何を学び,継承し,精神医学を改革・改良できたか」という本誌60周年記念特集の続編である。本号では統合失調症の画像研究,薬物療法,発達障害,災害精神医学について第一人者がそれぞれのテーマの過去,現在,未来について論じている。精神科臨床はゆっくりだが大きなうねりのように徐々に変革している。2〜3年を振り返っただけではどこが変化したのかが分かりづらいが,20〜30年を振り返ってみると精神科臨床が大きく変化したことが分かる。30年前はMRIがやっと臨床に導入され始めた頃であり,臨床検査といえば脳波が主流であった。最近は,器質性精神疾患の検査手段は豊富となり,一部の疾患を特異的に診断することができるようになった。30年前にはクロザピンはわが国の臨床に導入されてはおらず,ましてや非定型抗精神病薬すらなかった。ハロペリドール,クロルプロマジン,三環系抗うつ薬,ベンゾジアゼピン系薬剤が精神科治療の主流であった。これらの治療薬はたしかに効果的ではあったが,現在使われている新規向精神薬よりも副作用は強かった。ハロペリドール,クロルプロマジン,三環系抗うつ薬を使った処方は最近はみかけなくなった。自分が患者であったならば,これらの古い向精神薬を服用するのは躊躇するし,したがって,余程新規向精神薬が無効でない限りは患者さんにも勧められない。クロザピンは一部の患者では重篤な副作用を惹起することはあるが,大部分の患者ではむしろ副作用は格段に少ない。もっと安全性が高いクロザピンの後継品が開発されることが望まれる。昔は,児童精神科医の専門と思っていたので,筆者の発達障害に関する勉強は不十分であった。最近は成人の精神科外来でも診断が求められることが多い。児童精神科医ではないので発達障害を診断できないとは言いづらくなってきた。山崎先生がおっしゃるにように,「安易に診断して,発達障害を屑かご的診断にしてはいけない」。そのためには,すべての精神科研修医が発達障害を診断できる教育体制を構築しなくてはいけないと思う。精神疾患の病因が解明されるのが筆者の夢だったが,たとえ病因が解明されなくても,患者さんのためになすべきことはたくさんあり,それによって患者さんや家族が幸福になることを願っている。

精神医学 第60巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

KEY WORDS INDEX

ページ範囲:P. - P.

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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