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文献詳細

雑誌文献

精神医学60巻12号

2018年12月発行

文献概要

特集 精神科臨床から何を学び,何を継承し,精神医学を改革・改良できたか(Ⅱ)

クロザピン療法の実際の運用—クロザピン専門病棟を中心とした琉球病院での取り組み

著者: 木田直也1 村上優2 大鶴卓1 久保彩子1 石橋孝勇1 福治康秀1

所属機関: 1国立病院機構琉球病院 2国立病院機構さいがた医療センター

ページ範囲:P.1339 - P.1347

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はじめに
 クロザピン(CLZ)は治療抵抗性統合失調症に唯一の適応を持つ抗精神病薬である。治療抵抗性とは,2種類以上の抗精神病薬を十分量・十分期間投与しても,Global Assessment of Functioning(GAF)尺度にて41点以上に相当する状態になったことがないものと定義される12)。日本でも2009年7月にCLZが上市されてから9年が経過した。2018年8月時点でのクロザリル患者モニタリングサービス(Clozaril Patient Monitoring Service:CPMS)の登録患者数は7,343人,登録医療機関数は486施設(患者登録済みは409施設)と増えている1)。ただ厚生労働省の2014年患者調査によれば,国内の医療機関で治療を受けている統合失調症患者数(類縁疾患も含む)は約77万人であり,そのうち治療抵抗性の患者は30%程度(約23万人)であると推計される2)が,これまでCLZ治療を受けたのは統合失調症患者全体の1%程度に留まる。対象患者は多いが,国内では治療が十分には普及していない状況である。
 琉球病院(以下,当院)では2010年2月から2018年9月までに延べ245例の治療抵抗性統合失調症患者にCLZ治療を行った。CLZの効果は高く3,5,7,8),重度の精神症状を有した患者でも,CLZ治療により精神症状が改善し,数年ぶりに退院をして就労をするなど社会復帰をしている例も増えている。これまでの臨床経験を踏まえ,今回は当院でのCLZ療法の実際の運用についてまとめたので報告を行う。
 なお本稿については,日本精神神経学会利益相反基準に照らして,開示するべき企業がないことを明記しておく。

参考文献

1)クロザリル適正使用委員会ホームページ:CPMS登録されている医療機関. http://www.clozaril-tekisei.jp/iryokikan.html(2018年9月28日閲覧)
2)藤井康男:Q32.世界各国のクロザピンの使用状況と日本での可能性について教えてください.藤井康男編:クロザピン100のQ & A,pp95-97,星和書店,2014
3)木田直也,大鶴卓,福田貴博,他:クロザピンの有効性とその臨床的意義.精神医学 54:1145-1150, 2012
4)木田直也,大鶴卓,高江洲慶,他:Clozapineによる無顆粒球症6例の報告.臨床精神薬理 17:1189-1196, 2014
5)木田直也,大鶴卓,高江洲慶,他:Clozapine治療の現在と将来—Clozapine地域連携「沖縄モデル」の発展を目指して.精神科治療学 30:51-56, 2015
6)木田直也,大鶴卓,村上優:Clozapine投与中に生じた6例の無顆粒球症,10例の白血球減少症・好中球減少症—Clozapine開始時年齢の重要性.臨床精神薬理 19:1015-1025, 2016
7)木田直也,大鶴卓,高江洲慶,他:Clozapine治療の現在と将来—Clozapineの有効性と地域連携「沖縄モデル」への取り組み.精神科治療学 31(増刊):133-138, 2016
8)木田直也,村上優,大鶴卓,他:Clozapineの治療継続性と有効性.臨床精神薬理 20:59-66, 2017
9)木田直也,村上優,宮田量治,他:平成29年度厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業(精神障害分野)「重度かつ慢性の精神障害者に対する包括的支援に関する政策研究—クロザピン使用指針研究(研究代表者:木田直也)」.平成29年度総括・分担研究報告書,2018
10)木田直也,村上優,大鶴卓,他:Clozapineの最適治療用量と維持治療用量の選定—琉球病院での臨床経験から.臨床精神薬理 21:1037-1045, 2018
11)木田直也,村上優,大鶴卓,他:地域におけるclozapine治療ネットワーク—琉球病院を拠点とした沖縄モデル.臨床精神薬理 21:1439-1449, 2018
錠25mg,100mg添付文書,2018年4月改訂(第12版).
13)Saito T, Ikeda M, Mushiroda T, et al:Pharmacogenomic Study of Clozapine-Induced Agranulocytosis/Granulocytopenia in a Japanese Population. Biol Psychiatry 80:636-642, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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