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文献詳細

雑誌文献

精神医学60巻12号

2018年12月発行

文献概要

特集 精神科臨床から何を学び,何を継承し,精神医学を改革・改良できたか(Ⅱ)

発達障害

著者: 山﨑晃資1

所属機関: 1弘徳会愛光病院

ページ範囲:P.1349 - P.1354

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はじめに
 最近,発達障害が過度に注目され,操作的診断基準による安易な診断が行われる傾向が強まっている。しかし,発達障害の概念は混乱しており,さまざまな学会のシンポジウムでテーマとして取り上げられることが多くなったが,発達障害を真正面から論じ,問題点を明らかにしようとする試みは不十分である。
 さらに医師や専門家が「臨床への躊躇い」や「臨床への畏れ」を持たなくなってきたことも気になる。短時間の面接や行動観察で,「自閉症スペクトラム障害」や「発達障害」と安易に診断するようになった。米国精神医学会のDSM-Ⅳには「研修を受けていない人にDSM-Ⅳが機械的に用いられてはならない。…料理の本のように使われるためのものではない」と明記され,DSM-51)でも「診断を確定するためにDSMを使用するには,臨床の研修と経験が必要であり,…臨床的専門知識を必要とする」と述べられている。
 言うまでもないことであるが,精神科臨床で発達障害が疑われる場合には,まず母子健康手帳の記載を参考にしながら両親から発達歴・成育歴を可能な限り詳細に聴取し,何度も面接と行動観察を行い,家庭・保育所・幼稚園・学校・職場などにおけるその人の状態を可能な限り聞き取り,その人の理解を深めていくものである。発達歴が聞き取れないこともあるが,その場合には臨床家の知識と経験を総動員させて,その人の理解と対応を検討しなければならない7,8)

参考文献

1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition. Washington D.C., 2013(日本精神神経学会日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014)
2)Frances A:Essentials of Psychiatric Diagnosis:Responding to the Challenges of DSM-5. Guilford Press, New York, 2013(大野裕,中川敦夫,柳沢圭子訳:精神疾患診断のエッセンス—DSM-5の上手な使い方.金剛出版,2014)
3)大野裕:精神医療・診断の手引き—DSM-Ⅲはなぜ作られ,DSM-5はなぜ批判されたか.金剛出版,2014
4)Piven J, Palmer P, Jacobi D, et al:Broader autism phenotype:evidence from a family history study of multiple-incidence autism families. Am J Psychiatry 154:185-190, 1997
5)Wing L:The Autistic Spectrum—A Guide for Parents and Professionals. Constable and Company Ltd., London, 1996(久保紘章,佐々木正美,清水康夫監訳:自閉症スペクトル—親と専門家のためのガイドブック.東京書籍,1998)
6)Wing L, Gould J:Severe impairments of social interaction and associated abnormalities:epidemiology and classification. J Autism Dev Disord 9:11-29, 1979
7)山﨑晃資:発達障害の診かたと接し方.精神科 9:493-499, 2006
8)山﨑晃資:操作的診断基準の有用性と限界をめぐる今日的課題.精神医学 48:717-719, 2006
9)山﨑晃資:これだけは知っておきたい発達障害の基礎知識.石井哲夫監修:発達障害の臨床的理解と支援.第1巻 発達障害の基本的理解:子どもの将来を見据えた支援のために.pp14-42,金子書房,2008
10)山﨑晃資:発達障害概念の再考.精神医学 52:736-737, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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