文献詳細
特集 精神科臨床から何を学び,何を継承し,精神医学を改革・改良できたか(Ⅱ)
文献概要
はじめに
1995年の阪神・淡路大震災は,災害に対する社会の認識を変え,多くの領域で体制を変える契機となった。本稿では,法制度や救急医療での変革を概観した後で,精神科医療・精神保健活動に「こころのケア」という言葉が与えられ,大きな社会的関心を集めるようになった経緯について振り返る。この災害では,早期には精神科救護所活動が行われた。全国から沢山の支援者が参加したこの活動では,コーディネート体制の脆弱性などの問題に直面した。また,復興期の精神保健活動には初めて公的資金が投入されたが,寄せ集めの組織は,活動の方針や方法論が定まらないなどの多くの困難に翻弄された。こうした課題がどのように克服されたのかを論じ,災害によって関心が高まった「こころのケア」が犯罪,暴力,虐待などの社会に潜む問題にも拡大されていった経緯についてまとめる。阪神・淡路大震災以後,自然災害後の精神保健活動は必要不可欠なものとして認識され,新たなシステムが整備されつつある。阪神・淡路大震災で直面した課題は克服されているのか,残された課題は何か,などを考える機会としたい。
1995年の阪神・淡路大震災は,災害に対する社会の認識を変え,多くの領域で体制を変える契機となった。本稿では,法制度や救急医療での変革を概観した後で,精神科医療・精神保健活動に「こころのケア」という言葉が与えられ,大きな社会的関心を集めるようになった経緯について振り返る。この災害では,早期には精神科救護所活動が行われた。全国から沢山の支援者が参加したこの活動では,コーディネート体制の脆弱性などの問題に直面した。また,復興期の精神保健活動には初めて公的資金が投入されたが,寄せ集めの組織は,活動の方針や方法論が定まらないなどの多くの困難に翻弄された。こうした課題がどのように克服されたのかを論じ,災害によって関心が高まった「こころのケア」が犯罪,暴力,虐待などの社会に潜む問題にも拡大されていった経緯についてまとめる。阪神・淡路大震災以後,自然災害後の精神保健活動は必要不可欠なものとして認識され,新たなシステムが整備されつつある。阪神・淡路大震災で直面した課題は克服されているのか,残された課題は何か,などを考える機会としたい。
参考文献
1)加藤寛:「こころのケア」の4年間—残されている課題.こころのケアセンター編,災害とトラウマ,みすず書房,pp151-172, 1999
2)加藤寛,麻生克郎:阪神・淡路大震災後に行われた精神科救護所活動とPTSD.中根充文,飛鳥井望編:臨床精神医学講座S6外傷後ストレス障害.中山書店,pp131-138,2000
3)加藤寛:日本における災害精神医学の進展;阪神・淡路大震災後の10年間をふり返って.精神医学 48:231-239, 2006
4)北原糸子:日本震災史—復旧から復興への歩み.ちくま新書,2016
5)中井久夫:災害がほんとうに襲った時—阪神淡路大震災50日間の記録.みすず書房,2011
6)山中茂樹:阪神大震災と災害報道.関西学院大学災害復興制度研究所研究紀要「災害復興研究」 9:131-135, 2017
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