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文献概要
特集 多様なアディクションとその対応
薬物依存—現状と新しい治療的アプローチ
著者: 成瀬暢也1
所属機関: 1埼玉県立精神医療センター
ページ範囲:P.141 - P.152
文献購入ページに移動はじめに
わが国の問題薬物は,これまで覚せい剤と有機溶剤が主であり,ともに精神病状態を引き起こすことから,精神科医療では,解毒・中毒性精神病の治療は行われてきた。しかし,その元にある依存症の治療は,ほとんど行われてこなかった。依存症の治療が重要であることは言うまでもない。
わが国では,薬物依存症は「病気」でなく「犯罪」として捉えられる傾向が現在も続いている。「ダメ。ゼッタイ。」に象徴される薬物乱用防止対策,中でも取り締りは世界一流である反面,依存症になった者への治療・回復支援は三流以下と言わざるを得ない。
このような状況で,最近,薬物依存症の治療を巡って,新たな変化が起きている。海外で有効性にエビデンスが認められている治療がわが国でも広がり始めているからである。この稿では,わが国の薬物依存の現状と新たな治療的アプローチについて述べる。
わが国の問題薬物は,これまで覚せい剤と有機溶剤が主であり,ともに精神病状態を引き起こすことから,精神科医療では,解毒・中毒性精神病の治療は行われてきた。しかし,その元にある依存症の治療は,ほとんど行われてこなかった。依存症の治療が重要であることは言うまでもない。
わが国では,薬物依存症は「病気」でなく「犯罪」として捉えられる傾向が現在も続いている。「ダメ。ゼッタイ。」に象徴される薬物乱用防止対策,中でも取り締りは世界一流である反面,依存症になった者への治療・回復支援は三流以下と言わざるを得ない。
このような状況で,最近,薬物依存症の治療を巡って,新たな変化が起きている。海外で有効性にエビデンスが認められている治療がわが国でも広がり始めているからである。この稿では,わが国の薬物依存の現状と新たな治療的アプローチについて述べる。
参考文献
1)小林桜児,松本俊彦,大槻正樹,他:覚せい剤依存者に対する外来再発予防プログラムの開発—Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(SMARPP).日本アルコール・薬物医学会雑誌 42:507-521, 2007
2)Litt MD, Kadden RM, Cooney NL, et al:Coping skills and treatment outcomes in cognitive-behavioral and interactional group therapy for alcoholism. J Consult Clin Psychol 71:118-128, 2003
3)Mary Marden Velasques, Gaylyn Gaddy Maurer, Cathy Crouch, et al:Group Treatment for Substance Abuse:A Stage-of-Change Therapy Manual. Guilford Press, New York, 2001(村上優,杠岳文監訳:物質使用障害のグループ治療TTM(トランス・セオリティカルカル・モデル)に基づく変化のステージ治療マニュアル.星和書店,2012)
4)松本俊彦,小林桜児:薬物依存者の社会復帰のために精神保健機関は何をすべきか?日本アルコール・薬物医学会雑誌 43:172-187, 2008
5)松本俊彦,小林桜児,今村扶美:薬物・アルコール依存症からの回復支援ワークブック.金剛出版,2011
6)松本俊彦,伊藤翼,高野歩,他:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査.平成28年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)分担研究報告書.2017
7)Matrix Institute. http://www.matrixinstitute.org/index.html(2017年12月5日閲覧)
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9)National Institute of Drug Abuse. http://www.drugabuse.gov/PODAT/PODAT1.html(2017年12月5日閲覧)
10)成瀬暢也,西川京子,吉岡幸子,他:アルコール・薬物問題をもつ人の家族の実態とニーズに関する研究.平成20年度障害者保健福祉推進事業「依存症者の社会生活に対する支援のための包括的な地域生活支援事業」総括事業報告書.pp31-115, 2009
11)成瀬暢也:精神作用物質使用障害の入院治療—「薬物渇望期」の対応を中心に.精神経誌 112:665-671, 2010
12)成瀬暢也:臨床家が知っておきたい依存症治療の基本とコツ.和田清編,精神科臨床エキスパート 依存と嗜癖—どう理解し,どう対処するか.pp18-48,医学書院,2013
13)成瀬暢也:薬物依存症の回復支援ハンドブック.金剛出版,2016
14)成瀬暢也:物質使用障害とどう向き合ったらよいのか 治療総論.精神療法 42:95-106, 2016
15)成瀬暢也:誰にでもできる薬物依存症の外来治療.精神経誌 119:260-268, 2017
16)成瀬暢也:誰にでもできる薬物依存症の診かた.中外医学社,2017
17)Rawson RA, Marinelli-Casey P, Anglin MD, et al:A multi-site comparison of psychosocial approaches for the treatment of methamphetamine dependence. Addiction 99:708-717, 2004
18)Stephen Rollnick, William R Miller, Christopher C Butler:Motivational Interviewing in Health Care. Helping Patients Change Behavior. Guilford Press, New York, 2008(後藤恵監訳:動機づけ面接法実践入門—あらゆる医療現場で応用するために.星和書店,2010)
19)和田清:日本における薬物乱用問題の変遷とその背景「危険ドラッグ」問題に焦点をあてて.公衆衛生 79:222-227, 2015
20)William R Miller, Stephen Rollnick:Motivational Interviewing. Guilford Press, New York, 2002(松島義博,後藤恵訳:動機づけ面接法—基礎・実践編.星和書店,2007)
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