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文献概要
追悼
融 道男先生を偲んで
著者: 西川徹1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野
ページ範囲:P.432 - P.434
文献購入ページに移動 東京医科歯科大学名誉教授で,精神医学の発展に大きく貢献された,融道男先生が,2017年5月7日に逝去されました。先生は,1958年に九州大学医学部をご卒業になり,精神医学を志して島崎敏樹先生が主宰されていた,東京医科歯科大学医学部神経精神医学教室に入局されました。その後,国立武蔵療養所神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター神経研究所)部長,信州大学医学部精神医学教室教授,東京医科歯科大学医学部神経精神医学教室教授,ならびに「生物学的精神医学および精神保健に関する研究・訓練のためのWHO協力センター」センター長をご歴任になるとともに,日本生物学的精神医学会理事長,日本神経精神薬理学会理事長,日本神経化学会理事をはじめ学会の要職を通じて,精神疾患の生物学的研究のリーダーの一人として活躍され,国内外から高い評価を受けてこられました。
融先生のライフワークは統合失調症の原因解明でしたが,そのために,生化学的アプローチが不可欠とお考えになり,早くから周到な準備をされていたことが窺われます。インディアナ大学のAprison教授の下に1964年より留学され,脳のアセチルコリンの微量測定法を確立されましたが,これも後の神経伝達物質の研究の基盤作りだったように思われます。常に,脳内物質の精度の高い測定法を,専門の基礎研究者の意見や指導を求めながら構築され,精神疾患の分子病態について新しい側面を開拓してこられたことが,基礎研究者からも信頼される水準の高い研究成果をもたらしたと推察されます。物質的な手がかりが乏しかった統合失調症には慎重に取り組まれ,前段階として,先生が別に注目されていた,本症と同じく明確な形態学的変化を伴わないにもかかわらず劇的な機能的変化を示す睡眠・睡眠覚醒リズムの生化学的研究から始められ,セロトニン伝達系との関係を明らかにする成果を挙げられました。
融先生のライフワークは統合失調症の原因解明でしたが,そのために,生化学的アプローチが不可欠とお考えになり,早くから周到な準備をされていたことが窺われます。インディアナ大学のAprison教授の下に1964年より留学され,脳のアセチルコリンの微量測定法を確立されましたが,これも後の神経伝達物質の研究の基盤作りだったように思われます。常に,脳内物質の精度の高い測定法を,専門の基礎研究者の意見や指導を求めながら構築され,精神疾患の分子病態について新しい側面を開拓してこられたことが,基礎研究者からも信頼される水準の高い研究成果をもたらしたと推察されます。物質的な手がかりが乏しかった統合失調症には慎重に取り組まれ,前段階として,先生が別に注目されていた,本症と同じく明確な形態学的変化を伴わないにもかかわらず劇的な機能的変化を示す睡眠・睡眠覚醒リズムの生化学的研究から始められ,セロトニン伝達系との関係を明らかにする成果を挙げられました。
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