文献詳細
特集 作業療法を活用するには
文献概要
はじめに
精神科訪問看護での作業療法士の訪問(以下,訪問OT)は,医療機関,訪問看護ステーションともに,看護師と同一の診療報酬が認められており,訪問看護師と協働して精神障害者の地域生活における在宅支援の一助を担ってきた。そのため,訪問OTの活動を語る前提として,多くの役割や業務が訪問看護師と分かち合われており,その差異が明瞭ではないことがしばしばあると思われる。しかし,それはあまり問題ではなく,むしろ,積極的に互いの職域を横断し,グラデーションとなるような支援が行われることが,訪問看護を利用する精神障害者(以下,利用者)の多様で常に変動するニーズに答えるために望ましいと考えている。
問題は,精神科領域の作業療法士(以下,精神科OT)の約90%が精神科病院の中で働いており,精神科訪問看護を実践する作業療法士の数が全体の約1%しかおらず,その従事者数の少なさと実践数の少なさである。
そのため,重要なことはどのようにやるかという理論ではなく,何が実行可能なのかという実践的な試行錯誤であり,さらにそれ以前の,自らが地域社会の資源として機能するよう活動の場を切り開いていくというソーシャルアクションの視点である。
私は2013年より,東京の練馬区と豊島区を中心に訪問看護ステーションKAZOC(かぞっく)という精神科領域専門の訪問看護ステーションを立ち上げ,現在,精神科OT7名(看護師14名)を配置し訪問支援を行っている。
今回,訪問OTについて論じる貴重な機会を得ることができた意義は大きく,関係領域および関係職種の方々に訪問OTの理解を深めて頂くきっかけとなれるよう,これまで行ってきた実践について報告したい。
精神科訪問看護での作業療法士の訪問(以下,訪問OT)は,医療機関,訪問看護ステーションともに,看護師と同一の診療報酬が認められており,訪問看護師と協働して精神障害者の地域生活における在宅支援の一助を担ってきた。そのため,訪問OTの活動を語る前提として,多くの役割や業務が訪問看護師と分かち合われており,その差異が明瞭ではないことがしばしばあると思われる。しかし,それはあまり問題ではなく,むしろ,積極的に互いの職域を横断し,グラデーションとなるような支援が行われることが,訪問看護を利用する精神障害者(以下,利用者)の多様で常に変動するニーズに答えるために望ましいと考えている。
問題は,精神科領域の作業療法士(以下,精神科OT)の約90%が精神科病院の中で働いており,精神科訪問看護を実践する作業療法士の数が全体の約1%しかおらず,その従事者数の少なさと実践数の少なさである。
そのため,重要なことはどのようにやるかという理論ではなく,何が実行可能なのかという実践的な試行錯誤であり,さらにそれ以前の,自らが地域社会の資源として機能するよう活動の場を切り開いていくというソーシャルアクションの視点である。
私は2013年より,東京の練馬区と豊島区を中心に訪問看護ステーションKAZOC(かぞっく)という精神科領域専門の訪問看護ステーションを立ち上げ,現在,精神科OT7名(看護師14名)を配置し訪問支援を行っている。
今回,訪問OTについて論じる貴重な機会を得ることができた意義は大きく,関係領域および関係職種の方々に訪問OTの理解を深めて頂くきっかけとなれるよう,これまで行ってきた実践について報告したい。
参考文献
1)大丸幸:作業療法の実践マネジメント.日本作業療法士協会監修,冨岡詔子,小林正義編:作業療法学全書改訂第3版第5巻.協同医書出版社,pp259-286,2010
2)三品桂子:重い精神障害のある人への包括型地域生活支援—アウトリーチ活動の理念とスキル.学術出版会,2013
3)森川すいめい,上原里程,奥田浩二,他;東京都の一地区におけるホームレスの精神疾患有病率.日本公衆衛生雑誌 58:331-339, 2011
4)日本精神科看護協会:精神科看護の定義.http://www.jpna.jp/outline/define.html(2018年7月12日閲覧)
5)冨岡詔子:障害概念と作業療法の理念.日本作業療法士協会監修,冨岡詔子,小林正義編:作業療法学全書改訂第3版第5巻.協同医書出版社,pp36-44.2010
6)渡邊乾:日本の精神科医療とハウジングファースト.稲葉剛,小川芳範,森川すいめい編:ハウジングファースト—住まいからはじまる支援の可能性.山吹書店,2018
7)山根寛:精神障害と作業療法新版.病いを生きる,病いと生きる—精神認知系作業療法の理論と実践.三輪書店,2017
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