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文献詳細

雑誌文献

精神医学60巻8号

2018年08月発行

文献概要

特集 作業療法を活用するには

高次脳機能障害における作業療法

著者: 松本直之1

所属機関: 1特定非営利活動法人東京ソテリア 地域活動支援センターはるえ野

ページ範囲:P.863 - P.873

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はじめに
 高次脳機能障害とは,外傷性脳損傷や脳血管障害などによる脳の損傷が原因で,後遺症として生ずる記憶障害,注意障害,失語症,遂行機能障害,社会的行動障害などの症状により日常生活や社会生活に制約を来す状態のことをいう。外見上分かりにくいことや一般的に認知されていないという特徴もあり,周囲からの理解やサポートを受けられず,孤立してしまうことも多い。そのため,周囲の関係者が適切な知識を共有して当事者・家族を支えていく必要がある。
 この高次脳機能障害という用語が使用されるようになったのは,ここ15〜20年である。それ以前は用語自体存在していなかったため,公的なサポートを受けることが難しく,どの制度にも適切に位置付けられてこなかった。1990年代後半に,当事者や家族が医療・福祉サービスを受けたいと訴え始め,高次脳機能障害という用語が用いられるようになった。2001年より厚生労働省は,「高次脳機能障害支援モデル事業」を5年間実施した。そして,「高次脳機能障害診断基準」「高次脳機能障害標準的訓練プログラム」「高次脳機能障害標準的社会復帰・生活・介護支援プログラム」3)を取りまとめた。これらにより,高次脳機能障害は,器質性精神障害に位置付けられ,社会復帰のために必要な福祉サービスを受けられるようになった。2006年度からは,障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)に基づく地域生活支援事業の一つとして高次脳機能障害支援普及事業へと引き継がれ,支援拠点機関は,2011年6月に47都道府県すべてに設置された。
 東京都においては,2006年11月から,東京都心身障害者福祉センターを支援拠点機関としている。そして,東京都内12圏域に拠点病院の設置と,区市町村高次脳機能障害者支援促進事業の実施を行い,区市町村ごとの支援員の配置や関係機関のネットワークづくりを推進している12)。また,子どもから成人までそれぞれのライフステージに合わせた当事者会や家族会も広がりつつある。

参考文献

1)遠藤てる,本田哲三,高橋玖美子:東京都における高次脳機能障害者調査について 第2報—生活実態調査報告.リハビリテーション医学 39:797-803, 2002
2)橋本圭司,中村俊規,野路井未穂,他:脳外傷後遺症実態調査報告書.東京医科歯科大学難治疾患研究所被害行動学研究部門,2004
3)国立リハビリテーションセンター:高次脳機能障害者支援の手引き(改訂第2版)平成20年11月.厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部,国立障害者リハビリテーションセンター,pp1-60, 2008
4)中島八十一:高次脳機能障害の現状と診断基準.中島八十一,寺島彰編:高次脳機能障害ハンドブック—診断・評価から自立支援まで.医学書院,pp1-20, 2006
5)日本作業療法士協会編:作業療法学全書改訂第3版第8巻作業療法治療学5高次脳機能障害.協同医書出版社,pp227-236, 2011
6)澤田梢,橋本優花里,近藤啓太,他:高次脳機能障害者の就労と神経心理学検査成績との関係—判別分析を用いた検討.高次脳機能研究 30:439-447, 2010
7)障害者職業総合センター:調査研究報告書No.92高次脳機能障害者の就業の継続を可能とする要因に関する研究.独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター,pp89-124, 2009
8)障害者職業総合センター:調査研究報告書No.129高次脳機能障害者の働き方の現状と今後の支援のあり方に関する研究Ⅱ.独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター,pp31-63, 2016
9)田谷勝夫:外傷性脳損傷の職業リハビリテーション.Monthly Book Medical Rehabilitation 25:60-66, 2003
10)田谷勝夫:日本の高次脳機能障害者に対する職業リハビリテーションの取り組み.高次脳機能研修 31:151-156, 2011
11)東京都福祉保健局:高次脳機能障害者支援ニーズ調査報告書.東京都福祉保健局障害者施策推進部計画課,pp17-36, 2009
12)東京都心身障害者福祉センター:高次脳機能障害者地域支援ハンドブック(改訂第三版).平成28年3月,pp79-80, 2016
13)生方克之:高次脳機能障害に対する社会資源—社会保険制度と障害者福祉制度の活用.MB MedReha 70:213-221, 2006
14)浦上裕子,山本正浩:高次脳機能障害者の就労にむけたリハビリテーション—発症から1年後の介入について.高次脳機能研修 35:9-18, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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