文献詳細
特集 不眠症の治療と睡眠薬
睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインの臨床的意義
著者: 三島和夫1
所属機関: 1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系精神科学講座
ページ範囲:P.949 - P.956
文献概要
睡眠薬に限ったことではないが,向精神薬の処方のあり方がいま厳しく問われている。特にベンゾジアゼピン受容体作動薬(GABAA受容体作動薬,以下,BZD)については乱用や依存例が問題視され,現在係争中の医療裁判もある。BZDについて否定的な論調が多い一方で,不眠医療のなかでは未だにそのプレゼンスは大きく,頼りにしている患者も多い。BZDは一切処方すべきでないといった極端な意見もあるが,BZD以外の睡眠薬が2種類しかなく効果的な代替療法が限られている現状からみて現実的ではない。
向精神薬にまつわる臨床問題を少しでも減らし,患者が抱えている懸念を和らげるには,適正使用を明示したガイドラインとその普及が必要である。特に,不眠症状が改善した後の漫然とした長期投与を避けることで乱用と依存のリスクはかなり低減できる。2013年6月に発出された『睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン』3,4)でも,その治療アルゴリズムの中で症状改善後の「治療終了」が明示されている。その意図としては,睡眠薬を用いた初期薬物療法の後に「減薬,休薬」か「安全な長期維持療法」のどちらをめざすのか患者と共有意思決定(shared decision making)してほしいということである。
参考文献
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