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文献詳細

雑誌文献

精神医学61巻10号

2019年10月発行

文献概要

特集 トラウマインフォームドケアと小児期逆境体験

非行とトラウマ—自閉スペクトラム症のケースを念頭に

著者: 天野玉記1 十一元三12

所属機関: 1特定非営利活動法人神経発達症研究推進機構 2京都大学大学院医学研究科人間健康科学系

ページ範囲:P.1167 - P.1172

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抄録 これまで非行の大きな背景として虐待をはじめとする生育環境の問題が指摘されてきた。そうすると,逆境的環境や事故・災害ほか各種被害により成長期にトラウマをかかえる場合,非行につながる行動がさらに生じやすくなることは十分予想される。本稿ではトラウマを負った若年成人の2事例を紹介し,トラウマが社会的問題行動を生む動因となり得ることを示した。事例Aでは虐待的な家庭環境,本人の発達特性への無理解,学校でのいじめなどがトラウマを生み,事例Bでは児童期に海難事故で父親を失ったことに関連してトラウマが生じており,両事例とも内在する強い怒りが自他への攻撃性につながっており,トラウマの治療とともに危険な攻撃性は鎮静化した。また,両事例とも自閉スペクトラム症を有するとともに解離症状を呈しており,事例ごとにPTSD症状の特徴を捉え,適した介入法を検討するには発達特性と解離に留意することが重要であると思われた。

参考文献

1)松浦直己:非行・犯罪心理学.明石書店,2015
2)十一元三:司法領域における広汎性発達障害の問題.家庭裁判月報 58(12):1-42,2006
3)熊上崇:広汎性発達障害を持つ非行事例の特徴.精神経誌 108:327-336, 2006
4)梅下節瑠:非行.山崎晃資,牛島定信,栗田広他編:現代児童青年精神医学改訂第2版.永井書店,pp214-224, 2012
5)Hofvander B, Delorme R, Chaste P, et al:Psychiatric and psychosocial problems in adults with normal-intelligence autism spectrum disorders. BMC Psychiatry 9:35, 2009
6)Amano T, Toichi M:Possible neural mechanisms of psychotherapy for trauma-related symptoms:cerebral responses to the neuropsychological treatment of post-traumatic stress disorder model individuals. Sci Rep. 2016. 6:34610. doi:10. 1038/srep34610.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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