文献詳細
特集 トラウマインフォームドケアと小児期逆境体験
文献概要
抄録 長期反復性外傷後の症状について,これまでにHermanにより複雑性外傷後ストレス障害(複雑性PTSD)が提唱されて以来,子ども虐待やDVなどのように,長期間繰り返される重大なトラウマ体験のサバイバーには,PTSD症状のみならず,激しい情動不安定や,対人関係における重大な問題,価値観の歪みという問題が生じ得ることが認められてきた。van der Kolkらは,これらの慢性的な対人トラウマにさらされた子どもの臨床的表現を記述し,それによって臨床家が効果的介入を開発し役立たせるように導くこと,および研究に役立てることを目的として,発達性トラウマ障害(developmental trauma disorder:DTD)を提起した。DTDに示されている症状群は,逆境体験にさらされている子どもたちの表す症状をよく表しており,診立てや治療の手がかりとして,考慮されるべき基準であると思われる。
参考文献
1)Herman JL:Trauma and Recovery. Basic Books, New York, 1992(中井久夫訳:心的外傷と回復.みすず書房,pp187-191, 1999)
2)van der Kolk BA, Pynoos RS, Cicchetti D, et al:Proposal to include a developmental trauma disorder diagnosis for children and adolescents in DSM-Ⅴ. National Child Traumatic Stress Network, Los Angeles, 2009
3)西澤哲:トラウマを中心として.奥山眞紀子,西澤哲,森田展彰編:虐待を受けた子どものケア・治療.診断と治療社,pp24-52, 2012
4)Friedman MJ, Resick PA, Bryant RA, et al:Considering PTSD for DSM-5. Depress Anxiety 28:750-769, 2011
5)飛鳥井望:複雑性PTSDの概念・診断・治療.精神療法 45:11-16, 2019
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