精神医学61巻10号

2019年10月発行

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短報

Clozapineが著効するも副作用から中止せざるを得ず，asenapinが有効であった1例

著者： 常岡俊昭¹² 杉沢諭¹³ 染村宏法¹² 宮保嘉津真¹² 石川文徳¹² 中村純子⁴ 山田真理¹² 佐賀信之¹² 岩波明¹²

所属機関： ¹昭和大学附属烏山病院 ²昭和大学医学部精神医学講座 ³昭和大学薬学部病院薬剤学講座 ⁴駒木野病院薬剤科

ページ範囲：P.1203 - P.1206

抄録　Clozapineは治療抵抗性統合失調症に効果を示す一方で，厳しい使用基準から副作用の問題や通院頻度・通院時間の問題などで継続することが難しい例も散見される。Clozapineが著効しながらも使用できない時に，次に使用するべき薬剤については一定の見解は定まっていない。今回我々はaripiprazoleなど非定型抗精神病薬6剤で有効性を認めないもしくは忍容性の問題を認めたため中止せざる得なかった患者に対してclozapineを投与したところ，著効したが白血球減少から継続できず，asenapinを使用したところ一定の効果を示した症例を経験したので報告する。

参考文献

1)榎本哲郎，伊藤寿彦，早川達郎，他：治療抵抗性統合失調症に対する治療戦略—日本におけるクロザピン治療の現状と課題．Progress In Medicine 33：2341-2345，2013

2)日本神経精神薬理学会編：統合失調症薬物治療ガイドライン．医学書院，2016

3)Ito S, Nemoto T, Tsujino N, et al：Differential impacts of duration of untreated psychosis(DUP)on cognitive function in first-episode schizophrenia according to mode of onset. Eur Psychiatry 30：995-1001, 2015

)適正使用ガイダンス改訂第8版—主な改訂箇所．　http://www.clozaril-tekisei.jp/etest7/clozaril_revisions201606.pdf(2019.2.9閲覧)

5)大下隆司：わが国におけるclozapineの適応，使用方法．臨床精神薬理 12：1375-1384, 2009

6)Shahid M, Walker GB, Zorn SH, et al：Asenapine：a novel psychopharmacologic agent with a unique human receptor signature. J Psychopharmacol 23：65-73, 2009

7)宮田久嗣：Asenapineの基礎—薬理学的特徴．精神科 30：55-61, 2017

8)今西泰一郎，山内美紀，小山司：アセナピンの基礎薬理学的特徴．臨床精神薬理 19：713-721, 2016

9)Leucht S, Cipriani A, Spineli L, et al：Comparative efficacy and tolerability of 15 antipsychotic drugs in schizophrenia：a multiple-treatments meta-analysis. Lancet 382：951-962, 2013