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特集 医療現場での怒り—どのように評価しどのように対応するべきか
怒りとは何か?—怒りとは人間にとっての普遍的な感情である
著者: 岩滿優美1
所属機関: 1北里大学大学院医療系研究科医療心理学
ページ範囲:P.1235 - P.1242
文献購入ページに移動抄録 怒りは,人間にとって普遍的な感情である。怒りを含む感情について,進化論的,生理的,認知的,社会文化的などさまざまな視点から研究が行われているが,いまだ共通の定義はない。ここでは,さまざまな感情理論を紹介し,怒りの種類について説明する。
患者の怒りの原因は,状況,身体症状,心理社会的状況,精神状態/パーソナリティの4つに分類される。また,患者の怒りには,病気,セルフコントロールの喪失や無力などの「対象のない抽象的な怒り」と,自己,友人や家族,医療者などの「対象のある怒り」とがある。患者の怒りには,その背後にさまざまな感情や思考が潜んでいる。さまざまな対象喪失による悲嘆としての怒り,あるいは不安や抑うつを封じ込めている怒りなど,患者は言語化できない感情や思考を怒りとして表出することがある。医療者は,自身の態度を振り返りながら,患者の置かれた状態や背景を鑑みて怒りを理解することが求められる。
患者の怒りの原因は,状況,身体症状,心理社会的状況,精神状態/パーソナリティの4つに分類される。また,患者の怒りには,病気,セルフコントロールの喪失や無力などの「対象のない抽象的な怒り」と,自己,友人や家族,医療者などの「対象のある怒り」とがある。患者の怒りには,その背後にさまざまな感情や思考が潜んでいる。さまざまな対象喪失による悲嘆としての怒り,あるいは不安や抑うつを封じ込めている怒りなど,患者は言語化できない感情や思考を怒りとして表出することがある。医療者は,自身の態度を振り返りながら,患者の置かれた状態や背景を鑑みて怒りを理解することが求められる。
参考文献
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