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文献詳細

雑誌文献

精神医学61巻11号

2019年11月発行

文献概要

研究と報告

医療観察法指定入院医療機関データベースの活用と課題—多職種スタッフに対するグループインタビュー調査から

著者: 小池純子12 河野稔明13 大町佳永3 村田雄一3 久保正恵2 黒木規臣2 藤井千代1 平林直次3

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域・司法精神医療研究部 2東京都立松沢病院 3国立精神・神経医療研究センター病院

ページ範囲:P.1343 - P.1352

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抄録 医療観察法データベースの活用の現状を明らかにし,解決策を検討するために,医療観察法多職種スタッフを対象としたフォーカス・グループ・ディスカッションを用いた研究を行った。その結果,データベース活用への積極的姿勢の要因と消極的姿勢の要因が抽出された。前者には「治療標準化の共有の必要性」と「外部との現状共有の必要性」があり,後者には,「情報リテラシーの強化」「運用や設計の見直しの必要性」が含まれた。
 医療観察法データベースは,歴史的背景を考慮した重点的かつ網羅的に把握しなければならない項目で構成されているが,臨床のニーズに応える項目にも対応し,医療観察法医療の水準の向上に寄与していく必要があると思われた。

参考文献

1)厚労科研岡田班[平成29年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業(精神障害分野))「観察法制度分析を用いた観察法医療の円滑な運用に係る体制整備・周辺制度の整備に係る研究」(研究代表者:岡田幸之)]:2018年度版医療観察法統計レポート—入院・通院モニタリング調査.2018
2)壁屋康洋:リスクアセスメントと共通評価項目の現在と未来.司法精神医学 10:22-29, 2015
3)河野稔明,安藤久美子,藤井千代,他:医療観察法制定から10年—現況分析.精神科 29:151-159, 2016
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24)厚生労働省:医療情報データベース基盤整備事業推進検討会.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku_128772.html(最終閲覧:2019年8月18日閲覧)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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