文献詳細
オピニオン パーソナリティ障害の現在
文献概要
少し前までは,「性格で悩んでいる」という人が多かった。今でも,境界性,自己愛性,回避性など,自分やパートナーがパーソナリティ障害ではないかと来院するケースは少なくないが,それ以上に増えているのは,自分が発達障害ではないかとか,愛着障害ではないかと相談にやってくるケースだ。
そもそもパーソナリティなるものが存在するかや,人格の否定と誤解されかねない「パーソナリティ障害」という用語が適切かという議論は,ここでは措くとしても,パーソナリティという複雑な統合体を相手にするよりも,そのベースにある発達(遺伝要因など生得的要因の強い特性)や愛着(養育など心理社会的要因の強い特性)からアプローチしたほうが,問題が明確になる場合もあるだろう。ただ,部分の合計が全体とは限らず,たとえば自己愛性パーソナリティ障害のように,パーソナリティというレベルで問題を理解することが有効な場合もある。パーソナリティ障害とされるものの多くは,発達や愛着の課題も抱えているが,どちらか一つの観点では,剰余が多すぎるということになる。
そもそもパーソナリティなるものが存在するかや,人格の否定と誤解されかねない「パーソナリティ障害」という用語が適切かという議論は,ここでは措くとしても,パーソナリティという複雑な統合体を相手にするよりも,そのベースにある発達(遺伝要因など生得的要因の強い特性)や愛着(養育など心理社会的要因の強い特性)からアプローチしたほうが,問題が明確になる場合もあるだろう。ただ,部分の合計が全体とは限らず,たとえば自己愛性パーソナリティ障害のように,パーソナリティというレベルで問題を理解することが有効な場合もある。パーソナリティ障害とされるものの多くは,発達や愛着の課題も抱えているが,どちらか一つの観点では,剰余が多すぎるということになる。
参考文献
1)ベンノ・ミュラー・ヒル著,南光進一郎訳:ホロコーストの科学—ナチの精神科医たち.岩波書店,1993
2)Joseph J:The lost study:a 1998 adoption study of personality that found no genetic relationship between birthparents and their 240 adopted-away biological offspring. Adv Child Dev Behav 45:93-124, 2013
3)Li T, Wang P, Wang SC, et al:Approaches Mediating Oxytocin Regulation of the Immune System.” Front Immunol 7:693, 2017
4)岡田尊司:愛着崩壊.角川選書,2012
5)岡田尊司:愛着障害の克服.光文社新書,2016
6)岡田尊司:愛着アプローチ.角川選書,2018
7)Rutter M, Kreppner J, Croft C, et al:Early adolescent outcomes of institutionally deprived and non-deprived adoptees. Ⅲ. Quasi-autism. Child Psychol Psychiatry 48:1200-1207, 2007
8)Sasaki T, Hashimoto K, Oda Y, et al:Decreased levels of serum oxytocin in pediatric patients with Attention Deficit/Hyperactivity Disorder. Psychiatry Res 228:746-751, 2015
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