icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学61巻2号

2019年02月発行

オピニオン パーソナリティ障害の現在

愛着関連障害としてのパーソナリティ障害

著者: 岡田尊司1

所属機関: 1岡田クリニック

ページ範囲:P.174 - P.177

文献概要

 少し前までは,「性格で悩んでいる」という人が多かった。今でも,境界性,自己愛性,回避性など,自分やパートナーがパーソナリティ障害ではないかと来院するケースは少なくないが,それ以上に増えているのは,自分が発達障害ではないかとか,愛着障害ではないかと相談にやってくるケースだ。
 そもそもパーソナリティなるものが存在するかや,人格の否定と誤解されかねない「パーソナリティ障害」という用語が適切かという議論は,ここでは措くとしても,パーソナリティという複雑な統合体を相手にするよりも,そのベースにある発達(遺伝要因など生得的要因の強い特性)や愛着(養育など心理社会的要因の強い特性)からアプローチしたほうが,問題が明確になる場合もあるだろう。ただ,部分の合計が全体とは限らず,たとえば自己愛性パーソナリティ障害のように,パーソナリティというレベルで問題を理解することが有効な場合もある。パーソナリティ障害とされるものの多くは,発達や愛着の課題も抱えているが,どちらか一つの観点では,剰余が多すぎるということになる。

参考文献

1)ベンノ・ミュラー・ヒル著,南光進一郎訳:ホロコーストの科学—ナチの精神科医たち.岩波書店,1993
2)Joseph J:The lost study:a 1998 adoption study of personality that found no genetic relationship between birthparents and their 240 adopted-away biological offspring. Adv Child Dev Behav 45:93-124, 2013
3)Li T, Wang P, Wang SC, et al:Approaches Mediating Oxytocin Regulation of the Immune System.” Front Immunol 7:693, 2017
4)岡田尊司:愛着崩壊.角川選書,2012
5)岡田尊司:愛着障害の克服.光文社新書,2016
6)岡田尊司:愛着アプローチ.角川選書,2018
7)Rutter M, Kreppner J, Croft C, et al:Early adolescent outcomes of institutionally deprived and non-deprived adoptees. Ⅲ. Quasi-autism. Child Psychol Psychiatry 48:1200-1207, 2007
8)Sasaki T, Hashimoto K, Oda Y, et al:Decreased levels of serum oxytocin in pediatric patients with Attention Deficit/Hyperactivity Disorder. Psychiatry Res 228:746-751, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら