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文献詳細

雑誌文献

精神医学61巻4号

2019年04月発行

文献概要

特集 統合失調症の治療ゴールをめぐって

自助と自治支援の視点から—病いの語りがもつ力の効用に着目して

著者: 栄セツコ1

所属機関: 1桃山学院大学社会学部

ページ範囲:P.423 - P.431

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抄録 本稿では,「統合失調症」の治療ゴールを「統合失調症の患者」と呼称されてきた人々のごく当たり前の生活を目指す「リカバリー」に置き,「統合失調症をもつ私」を主人公とした病いの物語を紡ぐ過程として,教育講演会活動の実践事例を紹介する。その事例から学んだことは,当事者が「自分こそが自分の専門家(自治)」として,「私」を主人公とする病いの物語を紡ぐ作業の必要性である。それには,病いの物語を承認する人々が不可欠であり,援助専門職には,当事者が弱さを開示した語りができる安全な場,病いの体験を仲間と分かち合える場,社会にある「援助・保護される精神障害者の物語」を「社会に貢献できる私の物語」に書き換える場を設定する役割が求められた。今後,当事者の語りが社会変革を意図して公共性を帯びるに従い,病いの経験知をもつ当事者と科学的な根拠に基づく専門知をもつ専門職が協働しながら,病いの経験知を活用した地域づくりが望まれる。

参考文献

1)ぐるーぷえら:精神障害者の社会復帰への実践 やむこころからの提言.やどかり出版,1978
2)浦河べてるの家:べてるの家の「非」援助論—そのままでいいと思えるための25章.医学書院,2002
3)栄セツコ:病いの語りによるソーシャルワーク.金剛出版,2018
4)岡村重夫:社会福祉原論.全国社会福祉協議会,1983
5)谷中輝雄:生活支援—精神障害者生活支援の理念と方法.やどかり出版,pp144-159, 1996
6)Ridway P:Restorying psychiatric disability:Learning from first person recovery narratives. Psychiatr Rehab J 24:335-343, 2001
7)Anthony WA:Recovery from mental illness:The guiding vision of the mental health service system in the 1990s. Psychosoc Rehab J 16:11-23, 1993
8)クライマンA著,江口重幸,五木田紳,上野豪志訳:病いの語り—慢性の病いをめぐる臨床人類学.誠信書房,1996
9)クライマンA著,江口重幸,五木田紳,上野豪志訳:病いの語り—慢性の病いをめぐる臨床人類学.p76, 1996
10)栄セツコ:精神障害当事者が参画した中学生に対する福祉教育.日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 22:35-47, 2013
11)栄セツコ:社会貢献としての病いの語り—精神障害当事者による福祉教育の「場」に着目して.コア・エシックス 10:109-120, 2014
12)アンダーソンH,グーリシャンH:クライエントこそ専門家である.マクナミーS,ガーゲンKJ編,野口裕二,野村直樹訳:ナラティブ・セラピー—社会構成主義の実践.金剛出版,pp43-64, 1997
13)ホワイトM,エプストンD著,小森康永監訳:物語としての家族.金剛出版,1992
14)カッツAH著,久保絋章監訳:セルフヘルプ・グループ.岩崎学術出版,1997
15)向谷地生良:統合失調症を持つ人への援助論—人とのつながりを取り戻すために.金剛出版,2009
16)Riessman F:The “Helper” therapy principle. Social Work 10:27-32, 1965

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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