文献詳細
文献概要
特集 マインドフルネス療法は他の精神療法と何が違うのか?
仏教心理学からみたマインドフルネス
著者: 井上ウィマラ1
所属機関: 1健康科学大学健康科学部福祉心理学科
ページ範囲:P.683 - P.692
文献購入ページに移動抄録 仏教心理学からみたマインドフルネスは,自我あるいは「私」という観念にまつわる身心相関現象をありのままに,かつ間主観的に見つめるトレーニング体系である。「私」という思いの発生から消滅までの全過程を繰り返しありのままに見守ることで,その仮想性と共同催眠性に気付き,「私」の有限性を受容して,「私」という幻を健全に使いこなすことを可能にしてくれる。解脱と呼ばれるマインドフルネスの最終目標地点に至る道のりでは,なれ親しんでいた「私」を手放す不安や悲しみを体験することもあるため,世間的な価値観を逆なでするような印象を持たれる可能性もある。臨床マインドフルネスが仏教心理学あるいは伝統マインドフルネスから学ぶには,「適応」という範囲を超えて,どうしたら自己超越のためにコンフォートゾーンから一歩を進めていくことができるのかという視点を開くことが必要であろう。
参考文献
1)Visuddhimagga. Pāli Text Society, 1975
2)スターン D:乳児の対人世界—理論編.岩崎学術出版社,1989
3)Majjhima Nikāya I. Pāli Text Society, 1888
4)コーク BAVD:PTSDにおける脳科学研究の臨床への考察.New York Academy of Sciences, 2006 https://www.meiji.ac.jp/bungaku/info/2011/6t5h7p0000005uki-att/a1307592936518.pdf(2019.4.25閲覧)
5)エプスタイン M:ブッダのサイコセラピー—心理療法と“空”の出会い.春秋社,2009
6)井上ウィマラ:五蘊と無我洞察におけるasminの位相.高野山大学論叢,43:61-96, 2008
7)井上ウィマラ:解脱.仏教心理学キーワード事典,春秋社,2012
8)キューブラー・ロス E:死ぬ瞬間—死とその過程について.中公公論社,2001
掲載誌情報