icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学61巻7号

2019年07月発行

文献概要

特集 今再び問う,内因性精神疾患と心因性精神疾患の概念

出来事としての内因性精神病—エンドン・出来事・中動態

著者: 清水健信1 松本卓也2

所属機関: 1京都大学医学部医学科 2京都大学大学院人間・環境学研究科

ページ範囲:P.749 - P.759

文献購入ページに移動
抄録 我々は内因性について考えるにあたってTellenbachがメランコリーの臨床から生み出した「エンドン・コスモス因性」の検討から出発し,「出来事」(Geschehen)としての内(エンドン)因性は心因性や外因性と相互排除的な概念ではないことを確認した。さらに統合失調症を「出来事」(Ereignis)として捉えるMüller-Suurに着目し,一瞬の強度/緊張を掘り下げるMüller-Suurの出来事の垂直性が,人間と世界の関係性の契機を追うTellenbachの出来事の水平性と異なる方向性を持っていることを指摘した。では水平的な出来事と垂直的な出来事はいかなる関係にあるのか。我々はこの問いに対する一定の見通しを,「水平のあいだ」と「垂直のあいだ」は同じ「あいだ」の二側面だとする木村敏の「メタノエシス」や「中動態的自己」概念のうちに見出すことになった。我々はこの中動態概念についてさらに展開していく必要がある。

参考文献

1)Tellenbach H:Melancholie 4 Aufl, Springer, Berlin, 1983(木村敏訳:メランコリー.みすず書房,1978)
2)Müller-Suur H:Der psychopathologische Aspekt des Schizophrenieproblems. Arch Psychiatr Nervenker Z Gesamte Neurol Psychiatr 193:11-21, 1955
3)Müller-Suur H:Die schizophrenen Symptome und der Eindruck des Schizophrenen. Fortschr Neurol Psychiatr Grenzgeb 26:141-150, 1958(長井真理訳:分裂病性症状と分裂病性の印象.木村敏編:分裂病の人間学.医学書院,1981)
4)Müller-Suur H:Rezension zu Tellenbach:Melancholie. Nervenarzt 33:473-474, 1962
5)Müller-Suur H:Das Schizophrene als Ereignis. In:Festschr. für K. Schneider Psychopathologie Heute. Tieme, Stuttgart, pp81-93, 1962
6)木村敏:あいだ.弘文堂,1988(ちくま学芸文庫,2005)
7)木村敏:中動態的自己の病理.臨床精神病理 31:147-154, 2010
8)松本雅彦:内因性概念の「内」と「外」.臨床精神病理 11:221-230, 1990

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?