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特集 今再び問う,内因性精神疾患と心因性精神疾患の概念
非定型精神病概念の再考
著者: 須賀英道1
所属機関: 1龍谷大学短期大学部社会福祉学科
ページ範囲:P.777 - P.786
文献購入ページに移動抄録 最近の精神医学において,その診断手法としてDSM-5が主座を占める流れの中で,内因性概念そのものが希薄化している。この背景には最近の精神科医療の対象となる疾患の病態が,内因性概念を規定する要ともなる発生了解の基本をあまり必要としない状況となってきていることが大きい。そうした中で,急性精神病の中核となる非定型精神病においては,未だこの発生了解概念が最も重要な診断手法となっている。本稿では非定型精神病について,その特徴,歴史的背景,生物学的指標の探求,DSM診断出現後に受けた影響,診断基準の作成,縦断的視点における臨床単位としての有用性を述べるとともに,精神科診断における内因性概念についても言及したい。
参考文献
1)満田久敏:内因性精神病の遺伝臨床的研究.精神経誌 55:195-216, 1954
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