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雑誌詳細

文献概要

特集 高齢者の精神科救急・急性期医療

精神科病院における高齢者の精神科救急・急性期医療

著者: 中村満1

所属機関: 1成増厚生病院

ページ範囲:P.1039 - P.1048

抄録 高齢者の精神科救急・急性期医療における課題とその方策を検討するために,精神科病院の精神科スーパー救急病棟での実態を調査した。高齢者は全体の約20%であり,診断はF3,F2,F0の順で多く,状態像として幻覚妄想状態とうつ状態,問題行動として自殺企図・希死念慮や暴言・暴力が多くみられた。80%に身体合併症を認め,11%が専門的治療のために転院していた。全体の1/3が独居で,半数が社会資源を利用していなかった。入院期間は非高齢者と比較して優位に延長しており,身体合併症と支援不足が原因と考えられた。長期化を防ぐためには,入院直後から退院後の生活を視野に入れ,病院の内外の多職種と協同し,医療,介護,福祉の包括的な支援を計画的に行う必要がある。精神科病院は,これらの連携を通して,「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の欠くことができない地域の一員として,患者を支えていく責務がある。

参考文献

1)これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会:これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 報告書.2017 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000152029.html(2019年8月20日閲覧)
2)日本精神科病院:「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について(決議文).2019  https://www.nisseikyo.or.jp/images/Teigen/TeigenPDF_WfzWLJXhPIeF1fkzpQeds35sKR2Hypqnxw06Sa1LkFX7aiznaBt8WDexZfZf7LhB_1.pdf(2019年8月20日閲覧)
3)中村満,奈良真起子:地域医療における身体合併症の対処状況と方向性.精神医学 60:577-585, 2018
4)出口靖之:身体合併症を持った精神科救急高齢患者への対応.精神科救急と身体化救急との連携による高齢患者の身体合併症への対応.精神科救急 19:42-45, 2016
5)渋谷孝之:精神科救急場面における高齢化問題.老年精神医学雑誌 28:863-867,2017
6)中村満:精神科救急における高齢者の実態.精神科救急 9:76-79,2006
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8)水野重樹:東京都板橋区における地域包括ケア.日本医師会雑誌 143:782-785, 2014
9)北村立:認知症医療における精神科医療の役割.日本社会精神医学会雑誌 26:59-64, 2017
10)北元健,中森靖,和田大樹,他:救命救急センターと精神科病院との連携に対する取り組み—ハブアンドスポークモデル.総合病院精神医学 29:24-29, 2017
11)山之内芳雄,大野美子:精神疾患を合併する救急患者対応の現状と課題—愛知県のモデル事業から.総合病院精神医学 29:30-36, 2017
12)吉村直記,山田浩樹,加藤進昌:単科精神科病院におけるスーパー救急医療.臨床精神医学 41:401-406,2012
13)山口武兼:「精神障害(認知症を含む)にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けて」配布資料.第69回日本病院学会 病院精神科医療委員会主催シンポジウム.新潟,2019

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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